「SARS-1」は遺伝子生物兵器か?

中国発の新型コロナウイルスは現在、パンデミック(世界的大流行)として多くの感染者、死亡者を出している。そのCOVID-19はSARS-CoV2と呼ばれている。SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群)は2002年から04年にかけ中国南部の広東省を起源に感染拡大し、多くの犠牲者を出したが、詳細な感染者数、死者数は不明だ。そのSARS―CoV(SARS-CoV1)の発生源について、中国の第4軍医学大学のXuDezhpng教授は、「SARSウイルスは自然に発生したものではない」と指摘している。すなわち、COVID-19の前に登場したSARS-1ウイルスは自然に発生したものではなく、遺伝子生物兵器として生産され、それが広げられていったというのだ。これは欧米情報機関関係者やメディア関係者の主張ではなく、SARSウイルスの発生地、中国の軍医学大学教授がその著作の中で記述しているものだ。

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同教授は中国の軍事予防医学部で軍事疫学の教鞭をとる大学教授(博士課程指導教官)だ。その大学教授が『SARS-1の不自然な起源と遺伝子生物兵器として人間の手でつくられたウイルス』と題する書籍の中で、SARS-1の発生源問題を記述している。海外中国メディア独語版「大紀元」が今月12日付で報じた。

同教授は2014年、中国医学ジャーナルで、SARSウイルス感染状況が他の人間の感染症とは異なっているという内容を既に書いている。そこで、ウイルスの祖先を自然界で探したが見つからなかった。コウモリやジャコウネコといった自然宿主が見つからないとすれば、ウイルスはどうして生存できるだろうか。教授は、「SARS-CoVは自然界から消滅している。SARS-CoVは単に旅客ウイルスだ」(独Passagiervirus)と呼んでいる。換言すれば、SARS-CoV1は「遺伝子生物兵器」だったことを示唆しているわけだ。

教授は、「SARS-CoVの発生源とその進化について、SARS-CoVは自然界から誕生したものではなく、不自然な進化を通じて広げられ、逆進化を通じて消滅していったと考えざるを得ない」というのだ。

「SARS-1は自然進化の模範とは一致しない。彼らは人間から人間へと、接触や空気の粒子を通じて素早く感染する。数カ月間で29カ国、地域に感染を拡散した後、自然界や人間社会から消滅していった。SARS-1は自然的な感染病ではない。ということは、SARS-1は不自然なプロセスを経て人間世界に侵入してきたのだ」

それでは誰がSARS-CoV1を生み出したかだ。「中国共産党政権の指令を受けて、SARS-CoV1が生まれてきた」とは中国軍医学部大学教授として言えないことは明らかだ。教授の答えは「テロリスト」だ。同教授はそれ以上言及していないが、旅客型ウイルスとエコロジー型ウイルスを挙げ、ウイルスが生物兵器として利用される点を述べている。

大学教授の論文が編集されている教科書では、生物兵器について興味深い内容を記述している。①生物兵器が容易に製造可能だという点、②致死性と潜伏期間が異なる生物兵器が製造可能であること、が指摘されている。例えば、致死性が10%以下の生物兵器は戦闘で相手を戦闘不能にする手段に利用できる一方、致死性10%以上の生物兵器は相手を抹殺する手段に利用できる。潜伏期間が短い生物兵器は戦闘時に利用でき、長い生物兵器は暗殺用などとして利用できる。また、特別のDNAフラグメントを利用して発がん性兵器(独OnkogeneWaffen)も製造できるというのだ。

また、生物兵器エアロゾルの理想的な粒子サイズは直径1~5マイクロメートルだ。粒子が小さければ、それだけ長い間、空気に漂う。その上、自然の感染症と生物兵器による感染症は区別が非常に難しく、証拠を集めることは困難だ。生物兵器を使用すれば世界から批判されることは避けられないが、「生物兵器を使用した側はウイルス関連の証拠が提示されたとしても容易にそれを否定できるから、国際機関は発生源調査が難しいだろう」という。

ここまで書くと、世界保健機関(WHO)の武漢現地調査を思い出さざるを得ない。WHO調査団は2月10日、2週間の現地調査の日程を終え、同月9日、武漢市で記者会見をして、新型コロナウイルスが中国科学院「武漢ウイルス研究所」から流失したという米国側の主張を「その可能性はかなり低い」と指摘し、「冷凍食品からウイルスが人に感染した可能性」を今後調査する意向を明らかにした。

中国軍医大関係者は書籍の中で、「生物兵器を使用したとしても国際機関の発生源調査は難しい」と主張したが、WHO調査団の調査結果はそれを実証したわけだ。同調査団に「武漢ウイルス研究所」と共同研究してきたメンバー、英国人動物学者ピーター・ダザック氏(PeteDaszak)が参加していた。ダザック氏は英国人動物学者で、米国の非営利組織、エコ・ヘルス・アライアンス(EcoHealthAlliance)の会長を務めている。同氏は「武漢ウイルス研究所」と共同で20本以上の論文を発表するなど、両者は緊密な関係だ。ダザック氏は昨年2月、研究仲間と共に国際医学誌「ランセット」で声明を発表し、そこで新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所流出説を「陰謀」と主張している(「WHO『武漢現地調査』の成果は?」2021年2月13日参考)。

今回、中国側から遺伝子生物兵器関連の情報が明らかになったわけだ。そのCOVID-19の前身というべきSARS-CoV1が遺伝子生物兵器として人間の手でつくられていたとすれば、SARS-CoV2はその延長線上から生まれてきたと当然考えられるわけだ。繰り返すが、この見解は中国の軍事医学大学教授の主張に基づくものだ。

武漢発のコロナウイルの発生源問題を考えるとき、ウイルスの機能獲得研究は中国だけではなく、米国ら軍事大国では久しく行われてきたという事実がある。生物兵器が完全に廃止されない限り、新たなSARS-CoV3、CoV4が世界に拡散される危険性は排除できない。武漢発のコロナ禍は人類に大きな警告を発しているわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。