なぜ東京都はグローバルダイニングを狙い撃ちするのか?

東京都は3月18日、営業時間の短縮要請に応じない飲食店に対して営業時間短縮の「命令」を出しました。

これは改正された新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づくもので、「正当な理由が無いと判断される」店舗を対象にしています。

再三の要請にも関わらず、時短営業に応じない店舗は、113店舗あったそうです。そのうち、今回都が命令を出したのは27店で、何とそのうち26店舗は、「権八」「モンスーンカフェ」などを展開するグローバルダイニングの経営店舗のようです。

グローバルダイニング社は、遺憾ながら、命令に従って営業時間短縮を発表しました(写真)。

疑問に思うのは、なぜ1つの飲食店企業だけを、狙い撃ちするかです。

東京都は「時短営業をしていないことを強く発信しているなど、感染リスクを高めるおそれがあったケース」に命令をしたと説明しているようです。グローバルダイニングの長谷川社長が、東京都のコロナ対策に批判的な発言をSNS上で行っており、それに対する見せしめの意味合いがあるように見えます。

しかし、そもそも時短要請は飽くまで「要請」であり、強制ではありませんでした。それに対する弁明書を飲食店側が提出するというのは、本来は必要のないことです。

また、東京都の「弁明の機会の付与」という文言に基づき、グローバルダイニング社が提出した弁明書には何の回答もせず、一方的に命令を出すのも不誠実な対応では無いでしょうか。

更に、自粛要請を無視して営業している飲食店の中で、特定の店舗だけを選び、そのほとんどがグローバルダイニング社の店舗というのは、あまりに露骨な嫌がらせです。

このような意図的な不公平を行政が平然と実行するのは、良く考えればとても恐ろしいことです。

東京都の飲食店には、一律毎日6万円の自粛協力金が支払われることになっていますが、多店舗で大きな店舗を展開する企業にとっては、売上に占める比率は微々たるもの。収益改善のサポートにはほとんどなりません。逆に、店舗を休業して、毎日6万円の「ボーナス」で遊びに出かけている飲食店経営者もいると聞きます。

この制度には、不公平だという多くの批判があるにも関わらず、改善する兆しはありません。

飲食店の営業自粛要請の理由となっている医療施設のひっ迫ですが、病床数に関して言えば、東京都の一般病床に占めるコロナ病床の比率は、わずか6.2%に過ぎません。

特定の飲食店に見せしめのような嫌がらせする時間があるなら、東京都にはもっと先にやるべきことが、たくさんあるのではないかと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。