謎過ぎる福田元首相の「記録担当補佐官」:公文書危機報道を問う③

オールド・メディアだけではない!

2017年の森友・加計学園の騒動以来、朝日・毎日新聞などのオールド・メディアによる公文書危機報道が現在に至るまで展開されているが、公文書危機報道には違和感しか覚えないのが筆者の噓偽りのない感想である。

国立公文書館ツイッターより:編集部

「公文書がない! 民主主義崩壊だ!」と大上段に論じながらその関心は活字情報に限られていたり、そもそも公文書の定義を誤る、即ち取得文書に触れなかったり、行政の第一の仕事が公文書を残すことになっていたりする。

公文書危機は専らオールド・メディアが煽動しているが、ここではある人物の言説に触れたい。

具体的には福田康夫元首相の公文書に関する言説である。福田氏は首相として公文書管理法の制定に尽力した。氏が公文書管理法の生みの親であり、同法がなければ公文書危機報道は起きなかっただろう。福田氏の現在の政治的影響力は知らないが、元首相の言説を検証することは決して無駄ではあるまい。

記録担当補佐官?

毎日新聞取材班が出版した「公文書危機 闇に葬られた記録」では公文書に関する福田氏のインタビューが掲載されている。氏は安倍政権下で起きた公文書危機(福田氏の主観)を憂いつつ、公文書管理の改善策として「記録担当補佐官」の設置を提唱している。 

これはSNSでも紹介されていたようだ。

福田氏が提唱する記録担当補佐官とはなんなのか? 氏は次のように言う。

記録担当補佐官は、番記者のように四六時中、総理の近くにいて、記録を収集したり、記録をとったりする役割をはたす。(1)

福田氏は具体的にどのような場面を想定しているのか述べていないが、この発言を素朴単純にとらえれば例えば首相と官僚が打ち合わせする席に記録担当補佐官を同席させ「記録を収集したり、記録をとったり」することを福田氏は認めていると解釈しても良いだろう。

そして疑問に思う。単にICレコーダーで録音すれば済む話ではないか。

別にわざわざ記録担当補佐官とやらを同席させなくても首相若しくはその話相手がICレコーダーを設置し会話内容を録音すればよい。

首相に打ち合わせを申し込む官僚にICレコーダーを持参させればよい。録音開始を宣言した後、首相と官僚が打ち合わせを始めれば良い。それで足りる。何も難しくない。 

公文書管理法には公文書の定義として電磁的記録(音声・映像データ)を含めている。ICレコーダーで録音されたものも立派な公文書である。だからICレコーダーだけでよい。記録担当補佐官なんて実に大袈裟な話である。

おそらく福田氏がイメージしている記録担当補佐官とは国会の「速記者」だろう。公文書管理法の制定を主導した元首相ですら記録に関する理解は古いのである。

そしてこの「記録担当補佐官」発言に対してインタビュアーの毎日新聞記者は何も疑問に思わずそれどころか「見識ある政治家」の発言のように紹介し、その文脈で「終わりの時間が迫っていたが、どうしても聞かなければならないことがあった。安倍首相へのメッセージだ。」(2)と劇的に綴る。

結局、これが全てなのだろう。公文書危機を報道する新聞記者は公文書の管理なんてそもそも関心はなく、彼らの関心は政局なのである。

ちなみに福田氏は「安倍首相へのメッセージ」として「大臣や総理もきちんとした書類管理が大事」(3)といった調子で具体的なことは述べていないが、インタビューの締めくくりとして毎日新聞記者による「首相の記録はなぜ残す必要があるのか」という問いに対して「日本のかたち、つまり歴史を残すことだ。」(4)とか「公文書はひとつひとつが石垣の石。それを積んで城ができる。総理の記録もひとつの石だが、ほかの石より少しだけ大きいということだね」(5)とか大仰に語るが、彼の記録観は実に古く自身が制定を主導した公文書管理法すら、まともに扱えていない。参考意見にもならない。福田氏は公文書管理の議論にもっとも適さない政治家だ。

インタビュアーの毎日新聞記者も福田氏のこの返答に対して「わたしには、この最後の言葉こそが安倍首相に対するメッセージのように聞こえた。」(6)と政局次元の感想しか述べない。一体、何を読まされているのか。

昭和で時間が停止しているオールド・メディア

公文書危機報道の本質は、危機を訴える者が公文書管理法を無視した無責任な主張を繰り返し勝手にヒステリー状態になっているに過ぎない。

公文書管理法に基づけば公文書には音声・録音データ、民間作成資料も含まれるが朝日・毎日新聞などのオールド・メディアの世界では公文書とは活字情報に限られICレコーダーもなく記録担当補佐官とやらが必要とされる世界なのである。彼らの時間は昭和で停止している。

言うまでもなく公文書の適正管理を阻害し行政を歪めているのは公文書危機報道を行う朝日・毎日新聞などのオールド・メディアである。

重要なことはオールド・メディアのヒステリーが野党に伝播し国会審議が止まり、国民生活に係る問題の議論が停滞していることである。だからもう朝日新聞も毎日新聞その他オールド・メディアも、公文書管理の報道は控えるべきである。

注釈

(1)毎日新聞取材班「公文書危機 闇に葬られた記録」105頁 毎日新聞出版 2020年
(2)        同   上          106頁
(3)        同   上          107頁
(4)        同   上          108頁
(5)        同   上
(6)        同   上