3月18日にGo Toトラベル事業の段階的な再開に関わる国への緊急要望が、青森県から鹿児島県までの32県知事より提出された。これに対して、赤羽国土交通大臣は、『再開は簡単ではない』として、当面再開は出来ないとしたが、32知事の訴えは、一定のメッセージとして届いたのではないだろうか。
その要望の要旨を抜粋する。
・感染状況が落ち着いている地域では、独自に宿泊割引等の観光需要の喚起を行っているところであるが、これまでにクラスターが発生したとの報告はない。
⇒宿泊等の観光事業喚起と感染拡大には相関関係が無い事実を語る
・地域の観光需要喚起に有効な「 Go Toトラベル事業」の早急な再開
⇒地方の観光需要喚起(GoToトラベル再開)を要望
・まずは感染状況が落ち着いている県単位で早急に「 Go Toトラベル事業」を再開
⇒方法論として、具体的にリスクの低い所から徐々に再開を提案
・観光関連事業者の経営は極めて深刻な状況にあり、回復には相当の期間を要する。
⇒地方経済の根幹を支える事業の困窮を説明
・また、段階的に対象エリアを広げた場合、地域間に不公平が生じるおそれがある
・6月末とされている「Go Toトラベル事業」の実施期間を大幅に延長する
⇒徐々に再開した場合のリスクを提示し、解消策まで提案
前向きな提案実施で、観光事業者への支援策の検討を急ぐという約束を勝ち取った。
ビジネスの世界でも参考に出来る、上手いやり方だろう。あくまで前向きな提案、そして、想定リスクに対しても具体的に打つ手の可能性まで用意しているのが、相手を説得し、動かせた成功要因だろう。
ところで、32知事という事は、全知事ではないのだが、どういうメンバー構成なのだろうか調べてみると、頷く点と、驚く点の両面があった。
頷く点は、外れた都道府県だ。当然だろうが、その時点で緊急事態宣言中の1都3県と、解除されたとはいえ緊急事態宣言の対象となっていた、東京・神奈川・埼玉・千葉・栃木・愛知・岐阜・大阪・兵庫・京都・福岡の11都府県。まだその時期ではないだろうという判断は理解できる。加えて、北海道・沖縄も現時点の感染状況、今までの感染拡大経験を踏まえて慎重になるのも分かる。
驚いたのは、宮城県だ。感染拡大状況にあり、独自の緊急事態宣言を出さざるを得ない状況だが、32県に名を連ねているのだ。合理的な判断とも言えるが、県民感情的に大丈夫なのだろうか、と心配になる。
そして最後に意味不明なのが、名を連ねなかった、島根・徳島の2県。両県とも、感染状況は落ち着いていて、地域経済も疲弊しているだろう。島根県は、聖火リレーボイコット、五輪反対まで持ち出して、地域経済支援を要望していたはずだ。地域選出の国会議員に窘められても政府に反旗を翻した形になっているが、それでは結果を引き出すのは難しいだろう。徳島はなぜなのだろうか、聞こえてきていない。
32知事が国を動かし、Go Toトラベルが再開される時は、支援は全地域に対して差の無いものにはなるだろう。その時、要望書に名を連ねなかった知事たちは、何を思うのだろうか。