心ときめくJazzの名演名盤/ケニー・バレル on ブルーノート

藤原 かずえ

ブルージーなジャズ・ギターを聴きたいときに、ケニー・バレル Kenny Burrell のブルーノート盤は最高です。
初リーダー作品から名盤『ミッドナイトブルー』まで深夜にヴォリュームを抑えて聴くことをおススメします。
きっと深夜生活を充実させる素晴らしいお供になると思います。

[Introducing Kenny Burrell]

1.This Time the Dream’s on Me
2.Fugue ‘n’ Blues
3.Takeela
4.Weaver of Dreams
5.Delilah
6.Rhythmorama
7.Blues for Skeeter

Kenny Burrell – guitar (except 6)
Tommy Flanagan – piano (except 6)
Paul Chambers – double bass (except 6)
Kenny Clarke – drums
Candido Camero – conga (except 2&4)

最初のリーダー・アルバムはまさに新進気鋭の若きギタリスト、ケニー・バレルを「紹介」するアルバムです。全編にわたって、ケニー・バレルの小気味よいブルージーでホーン・ライクなギター・ソロが聴けます。同郷(デトロイト)の友人であるトミー・フラナガン、ポール・チェンバース、ケニー・クラークのピアノトリオ+キャンディド・カメロのコンガを加えた全員リズム楽器のクインテットはバレルを中心に絡み合い、絶妙のチームワークで聴かせ続けます。特にクラークとカメロが織りなす変化に富んだ超絶なドラミングはこのアルバムの大きな聴きどころの一つです。

(1)はバレルの縮図のような作品であり、キメが効いたブルージーなテーマ演奏とリズムセクションの流れるようなソロ演奏で構成される典型的なハードバップです。(2)はフラナガンとの流れるような絡み合いが素敵なブルースです。(3)ではキャンディドのコンガがリード楽器の役目を果たしています。(4)は洗練された美しいバラッドです。(5)はギターの王道ともいえるブルージーなラテンをバレルが情緒豊かに聴かせてくれます。キャンディドのコンガも素晴らしいです。(6)はクラークのドラムととキャンディドのコンガだけの見事なコラボ作品です。(7)ゆっくりとグルーヴする余裕のブルースです。最初のアルバムは腹八分目で終わります(笑)

[Kenny Burrell 2]

1.Get Happy
2.But Not for Me
3.Mexico Swing
4.Moten Swing
5.Cheetah
6.Now See How You Are
7.Phinupi
8.How About You?

Kenny Burrell – guitar
Kenny Dorham (3) – trumpet
J. R. Monterose (3), Frank Foster (6-8) – tenor saxophone
Tommy Flanagan (except 2&3), Bobby Timmons(3) – piano
Paul Chambers (1), Sam Jones(3), Oscar Pettiford (4-8) – bass
Kenny Clarke (1), Arthur Edgehill(3), Shadow Wilson (4-8) – drums
Candido – conga (1)

このアルバムは前作の未収録曲と別のセッションで構成されています。前作の最後の腹八分目は本当に腹八分目だったのです。ジャケットの絵はブルーノートに初めて雇ってもらったアンディという名の28歳の貧乏な無名の画家がたった15分で書いたものです。

(1)ではチェンバースのベースが先行して、クラークのドラムとキャンディドのコンガが続き、遅れてやってきたバレルとフラナガンが見事なバトルを展開します。(2)はガラッと変わって、感情に訴えるバレルのソロギターが響くバラッドです。(3)は伝説の『カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム』のホットな別セッションです。ドーハムのトランペットが冴えていますが、主役はバレルです。(4)からはベースとドラムが代わります。(4)はバレルとフラナガンによる落ち着いた演奏です。(5)はテーマからソロに見事に移行するホーンライクなギターが快調にスウィングするアップ・テンポな曲です。(6)(7)(8)にはフランク・フォスターのテナー・サックスが入ります。いずれも聴きやすい小綺麗なハードバップです。

[Blue Lights Vol. 1 & 2]

Vol 1
1.Yes Baby
2.Scotch Blues
3.Autumn in New York
4.Caravan

Vol 2
1.Rock Salt
2.The Man I Love
3.Chuckin’
4.Phinupi

Kenny Burrell – guitar
Louis Smith – trumpet
Tina Brooks (Vol 1: 2,3; Vol 2: 1-3) – tenor saxophone
Junior Cook (Vol 1: 1-3; Vol 2: 1-3) – tenor saxophone
Duke Jordan (Vol 1), Bobby Timmons (Vol 2) – piano
Sam Jones – bass
Art Blakey – drums

基本的にトランペットとテナー・サックス2管にギターカルテットの組み合わせです。いつものナイアガラ・ロールを前面に出さないアート・ブレイキーの抑制的なドラミングがいい味出しています。さて、このアルバムでもジャケット制作に貧乏画家のアンディが採用されます。なかなか味のある絵だと思います。ちなみに彼のファミリーネームはウォーホールと言います。

(1-1)は、ブルージーな刺激を与え続けるバレルのギターとルイ・スミスのテクニックに富んだトランペットが光るブルースです。(1-2)は、ハードバップの様式美が愉しめるブルースです。この曲もルイ・スミスが光っています。(1-3)ではバレルの抒情的なバラッドを愉しめます。デューク・エリントンのスタンダード曲である(1-4)では待ってましたとばかりにブレイキーが疾走します。ルイ・スミスの才能も爆発します。デューク・ジョーダンのピアノソロもここに来て本領発揮です。(2-1)もブレイキーのドラムスとルイ・スミスをはじめとする面々が洗練された王道のハードバップを聴かせてくれます。(2-2)はそれまでひたすらバッキングしていたサム・ジョーンズが孤高の刻みを響かせた後、ルイ・スミスとボビー・ティモンズが花を添えます。(2-3)は、テーマのアンサンブルからバレルとティモンズが引っ張ります。(2-4)はバランスが取れた快調なハードバップです。

[On View at the Five Spot Cafe with Art Blakey]

1.Birks’ Works
2.Lady Be Good
3.Lover Man
4.Swingin’
5.Hallelujah
6.Beef Stew Blues
7.If You Could See Me Now
8.36-23-36

Kenny Burrell – guitar
Tina Brooks – tenor saxophone (1,2,4)
Bobby Timmons – piano (1-4)
Roland Hanna – piano (5-8)
Ben Tucker – bass
Art Blakey – drums

テナー・サックス+ギターカルテットによるNYのジャズ・クラブ「ファイヴスポット」でのライヴ・レコーディングです。アート・ブレイキーのリズムに乗せて熱くブルージーでしかもわかりやすいハードバップがたっぷりと展開されます。ティナ・ブルックスのソロも素晴らしいです。

(1)は有名な名演[Moanin’]を連想させるブレイキーの王道スタイルのブルースです。このハードバップのセッションが”with Art Blakey”である所以です。(2)(4)(5)はどれもアップテンポな展開でのバレルの繊細なプレイを愉しむことができます。ブレイキーもさすがのプレイです。一度聴いた後でドラムだけ意識して聴くのも一興です。(3)のバラッドは時代を完全に先取りしたクールで洗練されたギタープレイを聴かせてくれる歴史的テイクです。(6)は各プレイヤーが計算された仕掛けを繰り返しています。(7)のバラッドでは、ローランド・ハナをフィーチャリングし、一番いいところでバレルが出てきます(笑)。(8)ではバレルが変化に富んだフレーズを次々と披露しています。

[Midnight Blue]

1.Chitlins con Carne
2.Mule
3.Soul Lament
4.Midnight Blue
5.Wavy Gravy
6.Gee, Baby, Ain’t I Good to You
7.Saturday Night Blues
8.Kenny’s Sound
9.K Twist

Kenny Burrell – guitar
Stanley Turrentine – tenor saxophone (except #3, 4, 6, 9)
Major Holley – bass (except #3)
Bill English – drums (except #3)
Ray Barretto – conga (except #3, 6)

広く名盤として知られている『ミッドナイト・ブルー』は、タイトル通り深夜に聴くのに究極のアルバムです。まさにブルージーとはこういう音楽を言うものと思います。けっしてフレーズの奇抜さを聴かせるアルバムではなく、感情に静かに入り込むアルバムです。それがこのアルバムの名盤たる所以であると考えます。ぜひ、深夜に聴いてみて下さい。

(1)はバレル18番のブルースにスタンリー・タレンタインが絡んでブルージーなインタ―プレイを聴かせてくれます。(2)(3)はこれ以上ない洗練された「深夜音楽」です。静かに心を癒してくれます。このアルバムの最高の感じどころです。(4)は十分に癒された心を再び軽~く活性化してくれます。深夜の悪だくみのお供に最適です(笑)。(5)も深夜を過ごすに最適な抑制されたブルースです。バレルとタレンタインのソロがリフを多用してファンキーです。(6)は、少し活性化した気持ちを一段抑えてくれます。再生のヴォリュームを低くして聴くと、バレルが奏でる心地よい弦の音だけがかすかに聞こえてくるはずです。(7)ではタレンタインがソウルフルに鳴きます。(8)(9)はボーナス・トラックです。アルバムとは切り離して聴く方がよいです。いずれもバレルお得意の洗練されたプレイを愉しめます。

以上、豊かな音楽性と洗練されたテクが創出する音楽です。
究極のイージーリスニングとして愉しんじゃいましょう!


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。