個人情報問題でもLINEアカウント続行、広島市のお粗末

椋木 太一

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

無料通信アプリ「LINE」(ライン)の利用者の個人情報が、業務を委託している中国企業から閲覧が可能になっていた問題で、国や地方自治体の情報管理やセキュリティーに対する認識が改めて問われています。ラインの使用を一時停止する動きがある中、広島市はラインの公式アカウントを続行するだけでなく、「開設アピール」のツイート(現在は削除)をしてしまうなど、問題意識やリテラシーの低さを露呈してしまいました。

顛末を簡単におさらいします。

広島市は今年3月1日、公式アカウントを開設しました。そして、3月17日、ラインが利用者の個人情報を閲覧できる権限を与えていたとの報道が出ました。広島市民の財産を脅かす危険性があるにも関わらず、広島市は特に動きを見せないため、私は3月19日午後、広島市に公式アカウントの取り扱いについて問い合わせ、国の調査で安全性が確認できるまで一時停止すべきだと求めました。そして、私の進言を嘲笑うかのように、この1時間後、上記の「開設アピール」がツイートされたわけなのです。

そして、翌3月20日、広島市は公式ホームページで公式アカウントの続行と引き続きの利用を求める文書を公開しました。個人情報やトークの内容などは中国からアクセスできる状況にはなかったことをラインと受託業者に確認したというのがその理由となっています。(参照:広島市がLINEを活用して提供するサービスの情報管理について – 広島市公式ホームページ (hiroshima.lg.jp)

実は、この「確認した」というのは、上記報道の内容に対するライン社の見解などを、担当者レベルが問い合わせた程度のことで、サーバーやセキュリティーなどから安全性を直接確認したわけではありませんでした。国が疑義を抱いている企業の言い分を鵜吞みにしていたということです。まるで、コントのようなやり取りですが、これが現実なのです。

ちなみに、上記の「開設アピール」ツイートはこの日までにすべて削除されていました。公式アカウントを続行すると宣言しておきながら、ツイートを削除することは矛盾しています。こうしたことも、リテラシーの低さの現れであると言わざるを得ません。こうなると、もはや祭りで、様々な掲示板やユーチューブチャンネルで、広島市のお粗末な対応が取り上げられていました。

一方、いくつかの自治体の動きは速く、上記報道から数日内に、開設している公式アカウントや行政サービスを一時停止しています。新型コロナウイルスでもそうですが、こうした有事の対応において、自治体で、スピードや質に明らかな差が生じていると感じています。格差はもともとあったのでしょうが、新型コロナウイルスによって、危機管理への感度が高まった結果、いろんなことが目に入るようになったのかもしれません。こうしたことへ目が肥えてきたからこそ、広島市をはじめとする各自治体には住民を守り抜く対応を求めたいのです。

このたび、広島市は、

「住民基本台帳等のデータを扱う基幹系システムとLINEが使用するインターネット回線は異なる通信回線であることから、公式アカウントを通じて広島市が所有する住民基本台帳等のデータが漏洩することはありません」

と説明しています。ただ、あらゆる事態を想定して、最大限の策を取ることは危機管理の基本だと思います。国が調査している最中に、早々にデータ漏洩はないと結論付けることは、あまりにも軽々すぎるのではないでしょうか。

また、広島市の情報が守られているからすべてOKということではありません。まず、守るべき対象は広島市民なのです。今回の件では、広島市民が公式アカウントにアクセスしたいがために、新たにラインをインストールすると、その分、リスクにさらすことにつながります。つまり、国が調査中の段階で安全性が担保できない中、広島市民を巻き込む危険性をはらむことになります。

再三、広島市に対しては、公式アカウントの一時停止を求めていますが、一部の機能の停止にとどまっています。公式アカウントを停止すれば、広島市の施策を動機としたラインのインストールは、その可能性が低くなります。公式アカウントを続行するリスクと、広島市民を守る可能性とのバランスを考えれば、一時停止することが当然なのです。

それでもなお、公式アカウントの一時停止を拒む広島市。当局は一体、何を守ろうとしているのでしょうか。私には到底、理解できません。