日本経済新聞によると国土交通省が発表した2021年1月1日時点の公示地価は、コロナウィルスの感染拡大の影響により、特に三大都市圏(東京・名古屋・大阪)の商業地を中心に下落しました。
特にインバウンド需要の恩恵を受けていた大阪や東京の銀座、浅草のような商業地は大きな下落となっています。一方で、福岡、仙台などの地方四都市は、再開発の期待かは堅調な地価となっています。
また、同じ観光地でもニセコに近い俱知安の公示地価は2桁上昇しています。これは、北海道新幹線の開業期待が折り込まれているのかもしれません。
私が気になるのは、自分の主たる投資対象である東京23区の住宅地の地価の動きです。
今回の調査では港区赤坂などの住宅地の地価は、若干上昇しているという結果になりました。これは富裕層の需要が高まっていることが影響していると解説されています。また、海外からの投資マネーが都心部に流れ込んでいることも原因かもしれません。
コロナウィルス感染拡大により、リモートワークが広がり、東京から郊外に人のシフトが起きると言われています。しかし、今回のデータを見る限り、現時点では都心の住宅地価格には目立った下落の動きは見えません。
ここで思い出すのは、リーマンショックや、東日本大震災の時の人々の行動です。
一時的に東京から多くの人がいなくなり、震災の時にはタワーマンションの大きな横揺れやエレベーターの運転停止が問題になりました。また浦安のような埋立地は液状化で被害を受けました。このような住宅には、もう人は戻らないと言われました。
しかし、今では湾岸のタワーマンションは人気で価格は上昇。浦安も相変わらず高級住宅地として人が住んでいます。
人間は「忘れる動物」だということです。
リモートワークや、ネットを使った買い物といった行動変化は、コロナウィルスに関係なく、これからも進んでいくはずです。
一方で、快適な住環境が整備され生活インフラが整っている都心部の住環境での生活ニーズは、なくなる事はないと思います。
一時的な行動変化と、構造的な行動変化を見分けること。これが、これからの日本の不動産動向を予想する上で、とても大切です。「不動産評論家」の無責任なコメントに振り回されてはいけません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。