国会議員のデタラメ疑惑追及は「免責特権」に値しない:篠原孝議員との訴訟の判決を受けて

原 英史

国会論戦は玉石混交だ。中でも「疑惑追及」はマスコミの注目も集める国会の華だが、内実を知る人からみれば、根拠不明のデタラメな追及が少なくない。いかにデタラメな追及がなされているか、一端が司法の場で明らかになった。

東京地裁 Wikipediaより

篠原孝議員と私の訴訟の判決が3月29日、東京地裁で下された。私の主張が認められ、篠原議員に165万円の賠償が命じられた。

訴訟で争ったのは、篠原議員が2019年7月17日に公開したブログ記事、『国家戦略特区は安倍政権による新たな「利権」を生むだけ、「政僚」原英史の跋扈を許す制度は廃止すべし』だ。

記事では、私が特区提案者から金銭的利益を得た、会食接待を受けたと虚偽のことが記され、「いかがわしい」「悪辣」「利権有識者の跋扈」などと誹謗中傷がなされた。

こんな事実無根の誹謗中傷を、国会議員という権威をまとって行う。断じて許されるべきでない。私個人の名誉回復も必要だが、それを超え、こんなことを放置したら、同様のことが繰り返され、ほかにも被害者を生みかねない。そう考えて訴訟で争ってきた。

判決では、私の主張が基本的に全面的に認められた。篠原議員は、「毎日新聞を引用した」「自分は50年間ずっと毎日新聞をとっている・・・その新聞を信用しないでどうするんですか」などと主張していたが、そうした抗弁は退けられ、以下のように指摘された。

  • 「被告(注:篠原議員)は、原告(注:私)が本件各新聞記事で報道された事実を否定していることを認識していながら、・・・これらの内容(注:毎日新聞記事、野党合同ヒアリングの配布資料)を特段吟味することもなく、漫然と、これらの資料の記載内容から推測して本件各摘示事実を摘示し、・・・意見、論評を表明したものと推認される。」
  • 「本件記事作成にあたって、被告に相当軽率な面があることは否めない。」

判決を受けて、3つのことを求めたい。

第1に、篠原議員には、自らの言論が司法の場で「漫然」「軽率」と厳しく評価されたことを真摯に受け止め、国会議員として適切に対応いただきたい。

第2に、今回の判決を受け、「国会議員の免責特権」の見直しの議論を国会で行ってほしい。

憲法第51条は、国会議員の国会内の言論は「院外で責任を問はれない」と定めている。

今回の事案はたまたま、篠原議員がブログ、つまり国会外で誹謗中傷を行ったため、訴訟で争うことができた。しかし、もし篠原議員が同じ内容を国会内で発言していたら、私は訴訟で争うことができず、泣き寝入りするしかなかった。

現に森ゆうこ議員は2019年秋の参議院予算委員会などで、篠原議員と同様の誹謗中傷を繰り返した。森議員は国会外でも私の自宅住所をネットで晒すなど行為があったので、これは訴訟で争っているが、国会内の発言はどうにもならない。

残念なことだが、本件に限らず、現在の国会ではこのレベルの低劣な言論が横行し、免責特権で守られ放置されている。今回の判決を受け、こうした言論が特権で守るに値するのか、再検討してほしい。国会内での検討に委ねてもなかなか進まないだろうから、私も国会外から問題提起を行っていく。

第3に、立憲民主党と国民民主党には、政党として責任ある対応をしてほしい。篠原議員も森議員も、2019年当時は国民民主党に所属し、現在は立憲民主党に所属する。所属議員の問題行動に対処すべきことは当然だが、それだけではない。2019年6月以降、両党は「国家戦略特区利権隠ぺい疑惑 野党合同ヒアリング」を設け、私の疑惑追及を行った。それを経て、篠原議員のブログ掲載や森議員の国会質問がなされた。デタラメな疑惑追及を誘発した責任が両党にはある。

しかも、立憲民主党はその後、国会の花形である参議院予算委員会の筆頭理事に森議員を配置している。国会での問題行動の総括なきまま要職を任せていることは理解に苦しむ。立憲民主党は、「事実かどうかはどうでもよいから疑惑追及を頑張れ」と所属議員に求めているのだろうか。党の姿勢を疑わざるを得ない。

最後に、今回の訴訟で多くの方々にお世話になった。判決をいただいた裁判所、私の代理人を務めていただいた岩井翼弁護士・国峯孝佑弁護士、訴訟で争うことを後押しし応援いただいた方々に、心から感謝申し上げたい。