先週号のNature誌に「THE BATTLE AGAINST PAPER MILLS」(不正論文製造工場との闘い)というタイトルのコメンタリーが発表されていた。
冒頭に「Some journals have admitted to a problem with fake research papers. Now editors are trying to combat it.」いくつかの雑誌がフェイク論文(全く裏づけるデータのない虚構論文)との闘いを強いられていることを認めたと書かれている。
オンライン出版になって印刷する経費が不要となったため、多くの質の悪い雑誌が発刊されるようになった。数年前からは、出版費用を荒稼ぎするために、なんでも受け入れる雑誌が問題視されたが、今回はレベルが異なる。
データそのものがないにもかかわらず、病院の医師たちの要望によって虚構論文を作り上げているという。全く関連のない病院から報告された論文が類似していることから問題が発覚したのだ。多くが中国からの論文という。
米国前大統領のフェイクなコメントで騒がれたが、科学の世界までフェイクに染まってきた。業績が名誉や出世につながるといってもこの事態は論外だ。私のところにも多くの論文審査依頼があるが、よく知っている雑誌以外の論文はお断りしている。それでも、どう考えても理屈に合わないデータに遭遇することが少なくない。
しかし、最近は想像を絶することが起こりつつある。論文を複数の雑誌に投稿すること(これまでの倫理観では、ある雑誌に投稿すれば、その判定が出るまでは他の雑誌には投稿しない)にも遭遇した。それも一つや二つではない。無から有を生むなど信じがたいことだ。もはや、今のシステムでは機能しないのかもしれない。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。