百田尚樹さんの本を批評したら、「人の歴史本を批評する暇があったら自分で通史を書け」という第三者がいましたが、私は何冊もそれぞれ違う視点から通史を書いています。
新書版で出ていた「日本と世界が分かる最強の日本史」(扶桑社新書)もそのひとつです。今回、全体を100の項目に分割し、重要なポイントをゴシックに、トランプ当選あたりからあとのことを項目として加えて文庫化し、「しました。
帯には「世界史に燦然と輝く日本の価値」、「日本国家の正史」「世界史のなかに日本の栄光と挫折はどう描かれるべきか」「栄光と挫折の歴史を正しく知ってこそ太陽はまた昇る」と書いてます。
私の歴史の本は、基本的には、ごく最近の出来事まで書いており、それが特色です。そうでこそ、過去のいろんな出来事が、現在にどうつながるか、浮かび上がってくるからです。
菅総理が、訪米することが決まったようで、それに先立ち、安倍前首相とも会談して指南を受けたようです。外交については、安倍前首相がすることならなんでも反対というカルト・チックな人は別にすれば、大成功だったと思いますが、そのひとつが、価値観外交という考え方と、多国間主義への支持だったと思います。
そこで、今日は、新しい本から、それについての項目を転載しておきたいと思います。
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メルケル首相は、「安倍首相は常に多国間主義に向けて努力してきた」とし、「フィナンシャル・タイムズ」紙は、「日本の外交政策に『ルールに基づく世界経済秩序の擁護者』という役割を持ち込み、法の支配へのコミットメントを共有するアジアでの連携を追求した」としています。
二国間の取引に傾くトランプ大統領のもとでは、アメリカが参加する多国間協定は難しい状況でした。しかし、アメリカ抜きででも多国間協定は結べばいいし、アメリカも大統領が替わったらあとで参加してくれればいいことです。
英国のEUからの離脱は、多国間主義にとって打撃ですが、EUはEPAをその穴埋めとできたことで安倍首相に感謝し、安倍首相の欧州訪問中止でブリュッセルでの調印ができなくなったとき、大統領と事務局長が二人そろって東京にやってきて調印式をして世界を驚かしました。
一方、イギリスも衝動的なEU離脱による穴埋めを日英貿易協定の締結でと交渉し、TPPへの参加すら視野に入れています。米欧だけでなく、インド、オーストラリア、シンガポールなどとは「民主主義・人権・市場経済」の原則を尊重する同じ価値をもつ国々の連携ということで「価値観外交」を推進して、これにアメリカ・フランス・イギリスも引き寄せました。
TPPはオバマ政権と調印にこぎ着けたものの、トランプ大統領が不参加を決め空中分解の危機にあったが、奇跡的にもアメリカ抜きのTPPを残りの国で発足にこぎ着け、その一方、アメリカとは二国間の「日米貿易協定」を結びほぼ所期の目的を達しました。
中国と欧米との関係は、習近平が焦って覇権主義を露呈したことで悪化しました。そのなかで、安倍政権の安定した現実主義が中国から再評価されることとなり、安倍首相の訪中は大歓迎され世界を驚かせたし、習近平主席の国賓としての訪日もコロナ騒動がなければ実行されていました。
中国は歴史を持ちだし日本を責めて自己満足を得るより、欧米との仲介者として日本を大事にしたほうが得であることにようやく気付いたのなら幸いなことです。
韓国との関係は、朴槿恵前大統領の「告げ口外交」に対して、朴大統領自身を批判しないなど辛抱強いアプローチが実って「最終的で不可逆的」な「慰安婦合意」にこぎ着けました。文在寅大統領には慰安婦問題の蒸し返しだけでなく、徴用工問題で日韓基本条約をないがしろにするような判決が出たのを韓国政府が放置したことで悪化していますが、日本側から歩み寄るべき問題ではありません。安倍外交は慌てないことで成功してきたのです。