日本人は「T細胞記憶による交差免疫」で新型コロナを撃退している可能性について

新型コロナの第4波襲来がマスコミを騒がせている。

「東京では1日の検査陽性者が〇〇〇人」とか「大阪では第3波以上の感染拡大か」など、テレビをつければ新型コロナの話題で持ちきりだ。

Ridofranz/iStock

とはいえ流石にもう4度目ともなると市街地の人々の緊張感はかなり薄れているようにも感じる。少なくとも1回目の緊急事態宣言が出た去年の今頃に比べれば、国民のコロナへの恐怖心はかなり薄らいでいる、というのが実情だろう。

「確かに1年前はかなり心配だったけど、1年経った今、身近でコロナ感染の実害が大きく出たという話も殆どない。まぁマスクするなど周りに合わせて感染対策しとけばいいか」

これくらいの認識の方が多いのではないかと推察している。

国民感情がそのように推移していくのも無理はない。日本人の新型コロナ被害は欧米と比して圧倒的に少ないのだから。

【G7各国の新型コロナ新規感染者数の推移】https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/index.html?a=1&y=0

こうして国際比較をしてみると、日本で大騒ぎだった第3波も今の第4波も、全てさざなみ程度にしか見えない。国民の認識が「コロナ疲れ」に変化しているのも無理はないところだろう。

さて、日本のコロナ感染被害が圧倒的に少ないこの現象は、科学的にどう検討されているのだろう。ここ最近、これに関して興味深い研究が多く出てきている。それが表題の「T細胞記憶による交差免疫仮説」だ。

交差免疫仮説とは、過去の旧型コロナウイルス(従来の風邪ウイルス)への感染によって、新型コロナウイルスに対しても抵抗性を示すT細胞記憶が存在しているのではないか、つまり旧型コロナに対する免疫記憶が新型コロナウイルスに対しても有効なのではないか、日本人にはそういう人が多いのではないか、という仮説である。

日本医師会COVID-19有識者会議の公式ホームページには、こんな研究が載っている。(*1)

「ウイルスに初感染した場合は、そのウイルスに対するIgMがIgGに先行して上昇することが免疫学の概念として確立している。しかし日本人における新型コロナウイルスに対する抗体の変動は、(その一般概念とは相反して、既存コロナの免疫記憶によってか)IgGの上昇がIgMの上昇よりも早い例が多いことが特徴である。(中略)52症例について解析したところ約75%が交差免疫あり(IgGが先に出現する)のパターンを示した。(中略)本研究結果は、日本人において、新型コロナウイルスに対する(T細胞記憶による)交差免疫が存在する可能性を示唆している。」

日本と同様にコロナ被害の少ないエクアドルでもT細胞記憶の研究が行われている(*2)。曰く

「意外なことに新型コロナウイルスに曝露されていない健康人の44%で新型コロナウイルスへのT細胞記憶があった。おそらく一般的な既存のコロナウイルスなどの過去の感染による交差免疫だろう」

とのことだ。もしこの研究が示唆するように、健常者のおよそ半数で交差免疫によるT細胞記憶が存在するのであれば、これは日本やエクアドル、その他東アジア各国においてコロナ被害が圧倒的に少ないことの説明となる可能性が出てくる。いわゆるこれまで謎とされてきた「ファクターX」の正体なのかもしれないのだ。

スウェーデンではすでに希望者全員に対しこのT細胞検査が実施されているという。アメリカではこのT細胞記憶の検査が気軽に150ドル(約15000円)でネット注文出来てしまうのである。

https://www.t-detect.com/

日本でも今後新型コロナのワクチンが順次接種開始されるが、ワクチン接種はこうしたT細胞免疫などへ影響を与えることが予想される。そのため、T細胞による交差免疫の調査はワクチンが普及する前に行われる必要があるだろう。

そもそも、もし多くの日本人にT細胞記憶による交差免疫が存在するのであれば…日本人のコロナ被害が少ないファクターXの原因であるのであれば…それは日本人にとって大きな安心材料になるであろう。人体への長期の副作用が不明な今回のワクチンも多くの日本人で不要なのかもしれない。あらゆる意味で、「T細胞記憶に寄る交差免疫」に対する大規模調査をワクチン導入前の今の日本で行う価値は非常に大きい。積極的に調査されてしかるべきだと思うのだが、他国と違って今の日本でそのような議論が盛り上がってきているとはいいにくい。

国が動かないのであれば、クラウドファンディングなどを活用して市民側からアプローチしてゆくしかないのだろうが、まずは国家レベルでの英断を期待したいところである。

*1
日本人における新型コロナウイルスIgM、IgG、IgA
蔵野信 東京大学医学部附属病院検査部准教授
矢冨裕 東京大学医学部附属病院検査部教授
https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/3891

*2
Pre-existingT-cellimmunitytoSARS-CoV-2inunexposedhealthycontrolsinEcuador,asdetectedwithaCOVID-19Interferon-GammaReleaseAssay
GustavoEcheverría,etal.,InternationalJournalofInfectiousDiseases105(2021)21–25
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33582369/