各地域のデータ分析の必要性など

石破茂です。

新型コロナウイルスの感染者数が急拡大しつつあり、第四波の到来かとも言われています。

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感染者の数を減少させること自体が最重要の目標なのではなく、新型コロナウイルスに対して弱者である基礎疾患保有者や高齢者などを重点的な対象として重症者や死亡者をいかに減らすか、日本医療の宿痾である水平的・垂直的な機動性・弾力性の欠如をどう克服するか、が解決すべき最優先の課題であると思いますが、相変わらず国民に自粛要請などの負担をお願いすべきとの論調が主流のように思われます。

ワクチンが普及するまでの間は免疫力を維持・向上させることも必要なはずで、過度の行動抑制は逆効果を生むことにもなりかねません。「敵」の本質を見ないままに危機を強調し、国民の団結心と協調心を鼓舞し、異論を封殺・排除するような風潮があるとすれば、それはかつて戦争に突入した時とあまり変わりがない、ということになりかねないのではないでしょうか。

「領土や領海、領空を警察権で守る」という日本独特の考えも、もはや政策論ではなく、「思想」に近いものです。「先人の知恵である世界にも稀な警察と防衛の分離」的な考えは、国内世論受けはするのかもしれませんが、グレーゾーン事態に対処することは極めて困難になりかねないのであって、領土・領海の保全が達成出来ず、多くの犠牲が生じ、国家主権であるこれらが奪われてしまった時にはもはや取り返しがつきません。その時になってどんなに悔いても遅いのです。

国是とも言われる「専守防衛」も、「守りに徹する」というと聞こえはいいかもしれませんが、非常に困難な防衛思想であるとの認識は、もっと広く共有されるべきと思っています。

民間人に多大の犠牲を生ぜしめた悲惨極まりない唯一の地上戦、沖縄における戦いは、持久戦のある意味での典型です。

「専守防衛」はこの持久戦とほとんど同義になりうるので、人員・装備・弾薬・燃料・食糧・抗堪性が十分に備わっていることが絶対の前提となります。国土はアメリカの約25分の1、でありながら海岸線の総延長距離はアメリカの3倍近く、そして山が迫り平地が狭隘で縦深性に乏しい日本の環境条件を考えれば、尚更難しい防衛戦略です。それでも敢えてこれを貫く以上は、その困難性とこれに伴うリスクを国民に正確に説明するのが責任ある政府の態度だと私は思います。

美しく勇ましい精神論だけでは日本の独立も、持続可能性も、国民の生存も守ることが出来ない時代に生きていることを我々はよく自覚しなければなりませんし、政治はたとえ一般受けしなくともこれを語る勇気を持たなければならないのだと、自省も含めて思いを強くしています。

先日来、何度か東京都の多摩地区でお話させて頂く機会があり、いくつかの東京全域の資料に目を通しているのですが、新型コロナウイルスの人口当たりの感染者数は人口密度とかなり正の相関にあるようです。社会的距離を保つのが重要というのはそういうことなのでしょう。

その他にも婚姻率や、昼間人口と夜間人口の差が、人口の増減率と正の相関にあります。東京都には62もの市区町村があるのですが、東京に限らず全国1741市区町村のすべてにおいて、それぞれの自治体であらゆるデータを精密に分析しなければ、日本の抱える問題の解は見出せないと改めて思ったことでした。

先日ご紹介した東洋経済新報社創立125周年記念事業の一環である「石橋湛山と保守政治」と題する保坂正康氏、船橋洋一氏と私をパネラーとするパネルディスカッションが、4月14日水曜日19時からオンライン配信されます。保守政治とは何なのか、随分と考えさせられ、新たな気付きも多かったシンポジウムでした。視聴には事前登録が必要だそうですので、ご関心のおありの方は東洋経済新報社のホームページをご覧ください。

昨年12月に出版されたものを今更ご紹介するのも恐縮ですが、今週読んだ本の中では「首都感染後の日本」(高嶋哲夫著・宝島新書)からいくつかの貴重な示唆を受けました。「感染者や死亡者の数に右往左往するのではなく、更なる情報の公表と精査が必要」「PCR検査を行った数と場所、感染者の年齢と病状、性別、職業などがわかればより正確なコロナ感染の経緯もわかり、これらを統計としてまとめると今より的確な対処が可能であり、単なる感染者数の公表でいたずらに危機感を煽るよりよほど科学的で合理的」「ほとんどの地方行政の首長は政府の言いなりになってしまい、独自の判断を貫くことは出来なかったが、地方を一番知っているのは地方自身であり、もっと独自の意見を持つべき」等々の見解は、まさしくその通りだと思います。

今年の京都の桜の開花は何と過去1200年の中で最も早かったのだそうです。1200年前といえば9世紀、平安時代のことですが、大阪府立大学の研究によれば、当時の宮廷の資料に花見に関する記述があるのだそうです。確たる知見があるわけではありませんが、世界的・歴史的な気候変動が起こっているのかもしれません。そのせいもあってか体調不良が長引いておられる方も多いようです。

寒暖差の大きい日々が続いておりますが、皆様ご自愛の上、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2021年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。