ワクチンの「1回目」の接種を終えて

ウィーンで12日午後12時30分にコロナワクチンの第1回目の接種を受けた。記録するために、前日の続編をまとめた。

▲第1回目のワクチン接種を受ける筆者(2021年4月12日病院で撮影)

ウィーン市では65歳以上の高齢者への接種を開始し、5月には50歳以上、6月以降は年齢制限を解除して接種希望者にワクチンを提供する予定だ。ウィーン市では80歳以上の高齢者や老人ホームの入居者、医療関係者のワクチン接種は一応終えている。クルツ首相は今年の夏は昔のような正常なサマーシーズンを迎えたいと述べている。ただし、英国発のウイルス変異株、南アフリカ発の変異株など、ウイルスのさまざまな変異株が猛威を振るいだしているから、首相の予想は現時点ではあくまで希望に過ぎない。

ウィーン市内には10カ所余りのワクチン接種場所が指定されている。ワクチン希望者は自分が希望する接種場所に予約し、接種を受ける。当方は前日のコラムでも報告したが、最大の接種場所、オーストリア・センターで予約を取ったが、自分の住む場所に近い病院でも接種が可能と知って、14区の病院で予約した。地下鉄を利用したら2番目の駅で下車し、そこから市電で3番目の停留場で降り、歩いて5分のところにある。

当方はこの病院で接種を希望したのは、地理的に近いこともあるが、同病院とは縁があるからだ。そこで40代後半、ガンの手術を受けた。60代に入って網膜剥離の手術も受けた。それぞれ大変だったが、病院関係者のケアで回復した。そんな個人的な体験があるので、病院に行かなければならなくなった場合、あそこに行こうと常に考えている。

病院は患者の生死がかかっている場所だ。いい病院を見つけることはその人の命にもかかわる重大問題だ。その意味で当方はラッキーだった。ちなみに、同病院はナチス・ドイツ時代、様々な実験を行った病院としても有名だ。欧州で評判の高いAKH病院のようには大きくなく、外観は昔の風情も残っている病院だ。なぜか分からないが、当方はその病院とは縁がある。病室の窓から夜遅くまで働く医師、看護師たちの姿を見ながら入院生活を送った日々を今なお鮮明に思い出す。

蛇足だが、「縁」といえば、当方には「縁のあるホテル」がある。このコラム欄でも一度書いた。観光の街ウィーンには多数の立派なホテルが多いが、その中で「縁のあるホテル」では、ウィ―ン訪問中の大統領、首相、外相らと次々と会見した思い出があるのだ。会見場所がそのホテルに指定された場合、その会見は成功する。もちろん、逆に、縁のないホテルもあった。会見の予約が取れない、土壇場でキャンセルされるといった思い出が詰まったホテルだ。病院、ホテル、そしてワクチンの接種場所ですら、当方には「縁」を大切に傾向が人一倍強い。

話をワクチン接種に戻す。当方が接種するコロナワクチンは米製造会社モデルナ社製だ。米ファイザー製と同様、mRNAワクチンだ。遺伝子治療の技術を駆使し、筋肉注射を通じて細胞内で免疫のあるタンパク質を効率的に作り出す。2回の接種が必要となる。12日はその1回目の接種日だった。第2回目の接種は5月17日の予定だ。

何事も初めての体験は緊張するものだ。コロナワクチンの第1回目の接種を受ける人にはやはり少々緊張気味の人が多い。接種を受ける前、医師から健康状況の質問を受ける。アレルギー体質か、過去の病歴などを聞き、接種可能かどうかの最終的決定を受ける。全てパスすれば、いよいよ接種室に入る。シャツを捲り上げて上腕に看護師がワクチンを接種する。数秒で終わる。その後、副作用などの発生を見るために20分余り、椅子に座っている。問題がない場合、帰宅する。接種後、筋肉の痛み、疲労感、発熱などの副作用が出ることはあるが、それはワクチン接種の場合、よくあることだ。

接種を終え、監視時間が過ぎて病院を後にする人々はさすがにホッとした表情を見せている。4、5週間後に第2回目の接種を受けると、体には完全な免疫ができる。稀な例だが、2回の接種後、コロナ検査で陽性になる人もいるが、重病化は基本的には避けられる。

中国武漢発の新型コロナウイルスは2019年末から1年半余り経過し、世界で多くの感染者、犠牲者を出している。世界で多くの人々がワクチンの接種を願っている。予約なしで接種会場に来て、ワクチンを接種してくれ、と強要する人も見られる。

オーストリアで昨年12月27日、基礎疾患のある80歳以上の高齢者が国内で最初にワクチンの接種を受けた。あれから3カ月以上が経過した。11日現在、オーストリアで211万7170回のワクチンが接種された。1回目のワクチン接種者は149万1518人で全体の19.23%、2回のワクチン接種を完了した国民は62万5652人で全体の8.07%だ。同国ではワクチン接種を受けられる16歳以上の国民の総数は753万1239人だ。

新型コロナウイルスとの戦いはこれからだ。夏が到来する前に、一刻も早く、多くの国民にワクチンを接種し、戦の準備をしなければならない。

1回目のワクチン接種が無事終わったことに感謝したい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。