八頭町議会議員選挙など

石破茂です。

さる11日に、私の地元である鳥取県八頭(やず)郡八頭町の町議会議員選挙が行われ、前回4年前の無投票とは一変、定数14人に対し現職13人、新人8人が立候補する大激戦となり、現職8人、新人6人が当選する結果となりました。新人には30歳代2人と女性1人が含まれ、大幅に若返ると同時に、計4人となった女性議員の割合も恐らく鳥取県内で最高となりました。

長く私をご支援くださった現職の落選はとても残念ですが、全体的に見れば、地方政治が大きく変わる可能性が示されたことはよかったと思います。

日本全国1718市町村それぞれの地域の課題も、最適解も、霞が関の中央官庁で分かるはずはなく、各市町村で見出していく他はありません。

変異株によって三たび拡大しつつある新型コロナウイルスへの対応も、意図的にすら思えるほどに東京中心・東京目線になっていることは大きな問題です。

現在の社会構造によって最も大きな利益を受けている中央の権力者や経済的権益の享受層にとっては、今の構造を維持することが最も望ましく、彼らには世の中を根底から変える動機も、今日的な利益も乏しいのであって、「歴史的な転換を成し遂げるのはいつの時代も地方の庶民・大衆である」とはそういうことであり、地方創生の主眼はそこにこそあるのだ、とつくづく思います。

今回の八頭町議選の投票率は8年前を少し上回る71%強でしたが、もう少し高ければ更によかったと思います。

国政であれ、地方政治であれ、独裁体制ではない民主主義下において、明確な意識をもって政治に参画する人が少ないところが発展するなどということはあり得ません。5割の得票率で当選する小選挙区で、投票率が5割とすれば、対有権者比25%の得票で当選することが出来、これによって多数党は7割前後の議席を占有することが可能となります。このことに対する怖れを我々は常に持たねばなりません。

小選挙区制は民意の反映よりも民意の集約を重視した制度であり、これを意識して比例代表制を並立させたのですが、選挙制度の変更は容易ではないことを踏まえると、政治を変えるには投票率を上げることこそが必要です。問われているのは主権者たる国民である、という、実に当たり前の、しかし今の諦観的・冷笑的な空気の中では忘れられがちなことが結論です。

新型コロナの感染が拡大していますが、この一年で医療の供給体制はどのように進み、治療技術はどのように進歩し、医療機関や医療従事者でどれほど共有されるようになったのか、逼迫が問題なのですから、分母と分子の両方を見なければならないのに、感染者数のみが強調される報道にはずっと違和感を覚えています。

日本医師会や東京医師会が積極的に発言し、政府の対応について厳しい意見を述べているのに対し、日本学術会議からの発言や提言が、昨年の7月に「感染症の予防と制御を目指した常設組織の創設について」の他はほとんど見られないことは不思議なことです。日本学術会議法第2章「職務及び権限」には、同会議が政府に対して勧告することが出来ることが定められていますが、この権能はコロナ禍に際してどのように行使されているのでしょうか。学術会議法には政府は同会議に対して諮問することが出来る、とも定められていますが、今回政府からそのような諮問がなされたという話も寡聞にして存じません。

日本医師会長も、東京医師会長も人物・識見共に優れた尊敬すべき立派な方であり、その発言は十分に傾聴すべきですが、医師会はあくまで医師の職能団体なのであって経済学や財政学の専門家集団ではありません。学術会議に対しては会員の任命拒否を巡って、特定のイデオロギーに偏っている等々の批判があり、その真偽について私は知る立場にはおりませんが、法律によって設立され、税金で運営されている以上はその役割を積極的に果たしてもらわなくてはなりません。国家国民のために役割を果たしてこそ、正当な評価がなされるはずです。

加えて、あれほどの大議論の末に国家戦略特区として愛媛県今治市に設立された岡山理科大学獣医学部からの発信が今回ほとんど見られないことも残念なことです。国家戦略特区として認める際に内閣として閣議決定した四条件(これを意図的にか「石破四条件」と呼称する人がいますが、「安倍内閣四条件」と称すのが正確です)は①「新たな分野のニーズがある」②「既存の大学では対応できない」③「教授陣や施設が充実している」④「獣医師の需給バランスに影響を与えない」というもので、ここで「新たな分野のニーズ」として想定されていたのは本来獣医学が得手とする「新型ウイルスによる感染症や新たな人畜共通感染症」「新たなバイオテロ」等でしたし、既存の大学では対応が出来ないが、新学部が優れた教授陣を招聘し施設を設けることで対応可能となると見込まれる場合には、それがどの大学であれ、大きな期待を込めて特別に国家戦略特区として認める、というものでした。まさしく今回の新型コロナウイルス禍はこれに合致するものであり、今後、同学部から有益な発信がなされることを期待します。

日本学術会議であれ、岡山理科大学獣医学部であれ、加えられている批判には実情を知らないままの的外れのものもあるでしょうが、それらを払拭して組織や政府に対する国民の信頼を得るためには、百万言を費やすより実績で示すことの方が有効なのだと考えます。

ワクチンの早急な摂取体制を早急に確立すべきことは当然ですが、今後の課題は医療の垂直的・水平的な弾力性と機動性の確保、重症化に対応できる医療体制の充実、国内におけるワクチン開発の手法の整備、「ワクチンパスポート」の形式や認知方法の確立、感染症研究者に対する支援の抜本的拡充、の5つであると思われます。どの課題についても、できる限りの努力をしたいと思います。

福島第一原発の処理水について、大阪府知事が大阪湾への放出を示唆したとのことですが、リスクを日本全体で分担すべきとの考えには賛同するものの、ロンドン条約やこれを受けた国内法からも不可能なはずで、政府としてはこれを明確に指摘しておかねばなりません。精神的には立派なことであっても、実現不可能なことを政治家が口にすることによって生じる混乱は、普天間基地の移設先を巡っての鳩山由紀夫総理の「国外、最低でも県外」発言の例からも明らかなことです。

今週は「満州国 交錯するナショナリズム」(鈴木貞美著・平凡社新書・2021年)と「日米開戦と人造石油」(岩間敏著・朝日新書・2016年)を興味深く読みました。
都心は小雨模様の週末となりました。皆様お元気でお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2021年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。