春日部オール与党体制の「行政と議会の癒着構造」

春日部市職員が作成した原稿を朗読した市議を特定

埼玉県春日部市の職員が市長提出の議案に賛成の意見を表明してもらうために「賛成討論」の原稿を作成し、議員に提供していたことがわかった。複数のメディアが報じた。

参考:【独自】市議会「賛成討論」の原稿、市が作成し議員提供・・・長年の慣行(讀賣新聞)

原稿の提供を受けた議員は、委員会または本会議で、提供を受けた原稿をそのまま朗読していたわけであるが、議員の実名を報じたメディアは存在しなかった。

春日部区役所 春日部市HPより

そこで筆者は春日部市に情報公開請求をおこない、市職員が作成した討論原稿を入手した。2019年度の市職員作成の原稿と市議会HPに公開されている委員会および本会議での賛成討論の発言を比較し、職員が作成した原稿をそのまま朗読していた議員を特定することに成功した。

2019年度の議会で、市職員が作成した原稿を朗読していた議員名と朗読回数は以下のとおりである。

  • 佐藤一議員(新政の会) 14回
  • 榛野博議員(新政の会) 14回
  • 鬼丸裕史議員(新政の会) 12回
  • 石川友和議員(新政の会) 5回
  • 荒木洋美議員(公明党) 4回
  • 水沼日出夫議員(新政の会) 4回
  • 滝沢英明議員(新政の会) 3回
  • 栄寛美議員(前進かすかべ。未来の会) 2回
  • 海老原光男議員(前進かすかべ。未来の会) 1回

春日部市議会の会派別勢力は、「新政の会」が9名で第一会派となっている。第二会派は「前進かすかべ。未来の会」「公明党」「日本共産党」が各6名で横並びとなっている。他に会派に属さない議員が4名存在する。

朗読数を会派別にみると次のとおりとなる。

  • 新政の会 52回
  • 公明党 4回
  • 前進かすかべ。未来の会 3回

市長与党とみられる「新政の会」が突出して多いことがわかった。市長野党とみられる日本共産党は、市長提出議案に反対することが多い。当然、市職員が作成した原稿を朗読している事実はなかった。会派に属さない議員4名も朗読していなかった。

地方政治は国政とは違い二元代表制をとっている。首長と議会は対等であり、相互の抑制と均衡によって緊張関係を保たなければならない。議会は議決機関として首長をトップとする行政を監視するという重要な役割を担っている。

ところが現実には、ほとんどの地方議会がオール与党体制となり、行政の追認機関に成り下がっていると批判される。今回の春日部市議会の事案は、行政と議会との「癒着構造」といえるものが公になったといえる。

議員の第一の「仕事」は議会で発言することである。議会で発言しない議員に存在価値はない。職員が作成した原稿を朗読して、「仕事」をしているフリをするのも論外である。

また議員は住民の意見を代弁しなければならない。市職員が作成した原稿を朗読するのであれば、市役所の意見を代弁していることになってしまう。

つまり、市職員が作成した原稿を議会で朗読していた議員は「議員の資『質』」以前に「議員の資『格』」がないといっても過言ではないのである。仕事をしない役立たずな議員は即刻退場していただきたい。