コロナ対策はもっと高齢者にもガマンさせるべき

筒井 冨美

コロナで更に拡大した世代間格差

2020年に始まった新型コロナウイルス(以下コロナ)流行の終わりが見えない。2021年春には、いわゆる第4派を迎えた。新規感染者数が過去最高値に至った大阪府では、4月5日から「まん延防止等重点措置」が適用された後も感染者数が抑制されず、「緊急事態宣言」を国に要請した。

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また、大阪府では感染防止措置として「部活動を原則休止」「大阪府外への教育活動延期」「大学はオンライン授業」「企業はテレワークの徹底」「歓送迎会自粛」「イベント制限」「公務員が繁華街で夜間外出自粛の呼びかけ」などが行われることとなった。

「またかよ…」と思いながらも、違和感を覚えるビジネスパースンも多いかと思う。毎度のことながら、「感染防止措置」でガマンを真っ先に要求されるのが子どもや学生たちである。次いで現役の勤労者(納税者)世代、そして高齢者をメインターゲットにした「感染防止措置」は見当たらない。また現在のところ、コロナ対策費用の多くは国債で賄われる。バラまいた時短協力金などのツケは、若者や将来世代にのしかかることが確定しているが、それを問題視する政治家は稀である。

政府コロナ対策分科会トップの尾身茂氏は、1月からネットで若い世代向けに「3密回避」「マスク着用」「外出自粛」などの「コロナ感染抑える協力」を呼びかけている。東京都の小池知事も3月に「若者向け新型コロナウイルス感染症に関する知事メッセージ」を発表した。しかしながら、コロナそのものは高齢者において深刻な疾患なのに、高齢者向けのメッセージも見当たらない。この一年で「感染防止のために我慢すべきは若者」という構図か出来上がってしまったように感じる。

病院で高齢者の相談に応じていると、「若者が遊び歩いているからコロナが収まらない!」と不平を漏らす高齢者は居ても、「ガマンしてくれて税金も支払ってくれる若者に感謝している」のような殊勝な高齢者は今なお出会ったことはない。昼間からカラオケに興じる高齢者グループや、公衆浴場で大声で(耳が遠くなるので)雑談する高齢者も割と見かけるが、公務員に注意されることもなさそうだし。

高齢者向けに送るべき感染防止メッセージ

高齢者向け感染防止策の政府広報を計画するならば、従来よりの「手洗い」「三密防止」等に加えて何を強調すべきなのか、以下に私案を記してみた

・今こそインターネットやスマホに慣れよう

コロナ禍の数少ない功績は、日本社会のインターネット環境やテレワークやオンライン授業が一気に進んだことであろう。しかしながら、定年後の高齢者世代関していえば、個人差はあるものの浸透しているとは言い難い。2020年には遠隔診療が大幅解禁されたが、ZoomやSkypeではなく電話診療を希望する高齢者が多かった。しかしながら、コロナ対策のみならず、宅配やら体操教室や遠方の家族との交流などネットに習熟することが老後生活を豊かにすることは疑問の余地がない。

「コロナ対策にテレワーク推進」が推奨されて1年以上が経つが、日本型組織で権限を握るキーパーソンは概して6-70代のことが多く、トップがネットを受け入れないがゆえに今なお対面会議を要求される社会人も多数存在する。

「高齢者よ、もっとネットを使おう!」と政府広報でアピールして、「GOTOナンチャラ」キャンペーンやるぐらいなら、高齢者の新規スマホ購入にも補助金を付けてもよいのではないか。

・若者にガマンを強要せず、不平不満はネットで公表しよう

「小学校で合唱していた、飛沫から感染する!」「公園のジャングルジムで子供が密になっていた、遊具を撤去すべき」…定年後のエネルギーを持て余してしまうのか、学校や病院や役所などに前述のようなクレームの電話を入れる高齢者は割と存在する。仕事なので一応は傾聴するが、長時間拘束されるし、医学的には無価値のことが多い。

クレームを入れるぐらい元気なのは喜ばしいが、不平不満はネットを活用してブログなりSNSで発信することをお勧めしたい。文字化することで冷静になれるし、同じ思いの仲間が見つかるかもしれない。素人の思い付きの多くは既にプロが検討した後であるが、万が一にも有用なアイデアならば担当者の目に留まる可能性もある。

・予防接種の順番が来たら、指定時間に会場に行くように宣伝

4月からコロナワクチンの高齢者向け接種が始まった。病院関係者は半ば予想していたが、予約したのに会場に来ない高齢者が少なくない。「単に忘れていた」「バスに乗り遅れた」「ワイドショーを見て副作用が怖くなった」…など理由は様々あるようだが。一度解凍したワクチンには期限があり、無断キャンセルの場合には貴重なワクチンが廃棄処分になる可能性が高い。接種券やお薬手帖を忘れる高齢者も多い。

「選挙の投票日アピール」やら「特殊詐欺に気を付けましょう」など、宣伝車やヘリコプターを使った政府広報は今なお健在だし、高齢者世代にはそれなりに効くようである。ならば、高齢者向け接種が始まった地域では、「コロナワクチンを受けましょう、接種券・身分証明書・お薬手帖を忘れずに」と選挙前ぐらいのしつこさで高齢者のスムーズな接種を促して欲しい。