非正規雇用者に賃金割増制を導入すべき --- 松橋 倫久

現在、厚生労働省では、同一労働同一賃金を進めている。

厚生労働省同一労働同一賃金特集ページ

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保をうたっているが、私はもう一歩踏み込むべきと考えている。すなわち、非正規雇用者賃金割増制を導入し、不安定な働き方を強いられている非正規雇用の方々の賃金を、正規雇用の方々の賃金より高く設定することにより、正規雇用と非正規雇用との間の格差を是正するべきだと思う。

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正規雇用と非正規雇用の間には、「身分差」とも言うべき不当な格差が横たわっている。正規雇用者の賃金を下げろというのではない。正規雇用の待遇や身分保障は、労働者保護の観点からも今のままで良いが、非正規雇用の不安定さに対する割増賃金を支払うべきである。

正規雇用と非正規雇用が、同じ仕事をしていていても、法や制度に守られ安定した地位の正規雇用者と、いつ解雇されるかわからない不安定な立場の非正規雇用者が同一賃金だとすれば、それは平等ではあっても、公平ではない。ましてや、現状では同一賃金ですら無い。

非正規雇用者賃金割増制に至る過程として、同一労働同一賃金を実施しているのであれば良いと思うが、もし同一労働同一賃金が厚生労働省の目指すゴールだとすれば、そのゴールは政策目標として不十分であると思う。正規雇用者と非正規雇用者の間に、ある程度の賃金の差が存在しなければ、不公平である。もちろん非正規雇用者の方が高い賃金を受けるべきである。

どれほど高い賃金を受けるべきかについては、諸外国の例を見ても、正規雇用者よりも非正規雇用者の方が賃金が低いという現状がある。欧州では100%を目指して80%なので、割増率は20%程度にしてはどうかと提案したい。つまり、非正規雇用者の賃金を、同一労働の正規雇用者の賃金の120%と設定するよう法律を整備するべきだ。

海外での同一労働同一賃金とは? 海外の歴史や課題と日本との違い

参考までに、欧州(2010年の値)では非正規雇用者の賃金は正規雇用者の80%程度であり、日本(2014年の値)では非正規雇用者の賃金は正規雇用者の60%程度にすぎない。これは、改善すべき値であると考える。まずは同一賃金というのは、現実的であるとは思う。しかし、同一労働同一賃金制度の先輩である欧州でさえ、非正規雇用者の賃金が正規雇用者の80%にしか達していないことから、より高い目標を掲げること自体に意味があると考える。

松橋 倫久
1978年青森県生まれ、元青森県庁職員。東北大学を経て2002年青森県庁に奉職。在職中弘前大学大学院修了。統合失調症を患い2016年同庁退職。現在は求職活動の傍ら、自治体行政のあるべき姿を研究中。