キャピタルゲイン税引き上げで、カリフォルニア州脱出の動きが加速も?

バイデン大統領がキャピタルゲイン税を引き上げると報じられ、こちらでご説明した通り現行から約2倍の39.6%(オバマケア向けの投資収入課税の3.8%を合わせて43.4%)と提示する見通しです。

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キャピタルゲイン税引き上げで忘れてならないのが、これはあくまで米連邦政府の水準であること。さらに州毎にキャピタルゲイン税が課税されるだけに、米国民にとっては二重の負担となるわけです。仮に報道された水準で成立すれば、州政府のキャピタルゲイン税と合わせた平均の税率は何と48.4%と、こちらも現行の29.0%から大幅に上昇するのですよ。では、州毎ではどうなるかといいますと・・・こちらをご覧下さい。

チャート:州別、連邦政府と州政府を合わせたキャピタルゲイン税率、上位10州 作成:My Big Apple NY

1位はカリフォルニア州で56.7%に及びます。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が増税をにらみ、シリコンバレーからテキサス州へ引っ越したのも、当然の成り行きと言えます。テキサス州の場合は43.4%と、アラスカ州やフロリダ州など並んで全米最低の水準にとどまりますからね。増税を受け、富裕層を中心に”Calexodus=カリフォルニア州からの脱出”の動きを加速させてもおかしくありません。

ちなみに、上院民主党のかく乱要因である保守派のジョー・マンチン議員を選出したウエスト・バージニア州は49.9%クリスティン・シネマ議員を送り出したアリゾナ州も49.4%と平均を上回ります。従って、やはりこの2人が引き上げ幅で対抗すること必至です。

もうひとつ、気になるのが米株市場へのインパクトですよね。過去のキャピタルゲイン税引き上げを振り返ると、約2倍に引き上げられたケースはありません。最も大幅に引き上げられた2013年は15%→20%でしたが、過去の米株相場がどうなったかといいますと、こちらをご覧下さい。

キャピタルゲイン税が引き上げられた年のS&P500のリターン 作成:My Big Apple NY

実は、それほど大きな影響を与えていません。前述した2013年には、29.6%高を遂げていました。株価は当時の景気動向にも左右されるだけに、それほど相関関係は強くないもようです。ただ今回は、法人税率の引き上げとの合わせ技となります。法人税引き上げでの米株相場のリターンは、こちら。

チャート:法人税が引き上げられた年のS&P500のリターン 作成:My Big Apple NY

法人税引き上げの例をみても、大幅な下落は1966年の1回のみ。米株相場は、増税という悪影響を消化し上昇してきたケースが多かったことが分かります。バイデン政権はこうした過去に加え、3月成立の追加経済対策、3月末に提示したインフラ計画、さらに今月中に発表予定の育児・医療向け支援策”米国家族計画”が増税という負の効果を吸収するとみているようです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年4月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください