ワクチンによる新型コロナ感染の収束 

(連載29 モンテカルロシミュレーションで検証)

世界の各国で新型コロナのワクチン接種が急速に進んでいます。ワクチンの種類、接種の速度、変異株の影響など、国ごとの差異はいろいろ報告されていますが、これまで本連載で解析している11カ国で、各国の新規陽性者数の動向に、明らかにワクチン接種の効果が認められましたので報告します。

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1.各国のワクチン接種率

図1は、解析している11カ国のワクチン接種率です。イスラエルが約60%、英国が約50%、米国が約40%、ドイツ、ベルギー、スペイン、スウェーデン、フランスが約20%、ブラジルが約10%、日本が約1%、オーストラリアが1%以下です。

2.ワクチン接種率と新規陽性者動向との相関

各国のワクチン接種率の違いが、新規陽性者数の動向にどう現れるかを探ってみました。前回の連載で指摘しましたが、3月上旬に、それまで新規陽性者数が横這い、微増、もしくは下降フェーズと動向がばらばらであった国々が、同期したように上昇を始めました。

図2は、ブラジルとオーストラリアを除いた9カ国の新規陽性者の昨年の10月以降の動向(計算値)を示したものです。3月8日の各国の陽性者数が、日本の3月8日の陽性者数と同じになるように係数(図中に示している数)を掛けて規格化しています。この図は対数表示ですから、係数を掛けても、グラフは上下するだけで、変動の形は変化しません。

3月8日から現在までの期間がグレーの領域です。各国とも同期して上昇し始め、その後、下降フェーズに入っています。この下降の傾きとピークアウトの時期を見ると、最も接種率の高いイスラエルが、小さいこぶの後に急激に下降しています。次に英国が、やはり小さいこぶ状の盛り上がりがふたつほど見られますが、やはり急激に下降しています。

ベルギー、フランス、スペイン、米国、ドイツ、スウェーデンは、比較的小さなピークを形作り、その後ピークアウトし下降を始めています。日本は、図2ではピークアウトの予測線を描いていますが、これはまだ、兆候が見えたものではなく、希望的観測ですので、今後どこまで上昇するかは不透明です。

これら陽性者の動向と、図1の各国のワクチンの接種率との間には明らかに相関があります。3月8日時点で接種率が高いイスラエル、英国は、ほとんどそのまま急激に下降、他の国々は、上昇を始めますが、接種率の増加に従いピークアウトしています。接種率の低い日本はそのまま上昇しています。

後で示すように、ドイツとスウェーデンのピークアウトは、まだそう明確ではありませんし、スペインの動向もまだはっきりしないところがあります。しかしながら、全体としては、3月8日以降の各国の陽性者の動向に、ワクチン接種率の効果が明らかに現れていると思います。

新たな変異株、ワクチンの種類等の懸案すべき問題はありますが、ワクチン接種が新型コロナ感染の収束の重要な切り札になると感じさせる兆候だと思い報告します。日本のワクチン接種はこれからですので、日本の新型コロナ感染の収束に希望が持てます。

以下、11カ国の陽性者、死亡者の動向を、いつものように報告します。

3.日本の動向

4月23日緊急事態宣言の発出の決定がありました。3度目の緊急事態宣言です。過去2回と同様に、宣言が発出されるとピークアウトするということを繰返すかもしれません。実際、4月23日の陽性者数は、速報ですが、金曜日であるにかかわらず前日より400人近く減少しました。

図3、4の予測線は、感染日で4月22日のピークアウトを仮定した線です。分科会の見解のように、今後重大な感染拡大の可能性があるかもしれませんし、予測線のようにピークアウトが起こるかもしれません。いずれにしても、近い将来にワクチン接種の効果が出るだろうというのが、過去2回とは大きく異なる点です。

図3の上部は、観測値と計算値から簡易式(東洋経済方式)で求めた実効再生産数Rtです。下部は陽性者数データ、予測値、及び、60歳以上の陽性者のデータと計算値です。

図4は、陽性者数、死亡者数の対数表示です。図3と同様、60歳以上の陽性者、それに加えて重症者数が表示してあります。このふたつは実効感染者ともほぼ同期しています。ただ、赤線で示している重症者の5%の線が、今年の1月までは死亡者にほぼ一致していました。ところが、図4では、第3波のピーク付近から4月初めの死亡者数が底をつくまで、死亡者数から大きくずれています。原因はわかりませんが、この時期だけ他の時期の2倍、重症者の10%位が死亡したことになります。

4.ベルギー、フランス

両国とも3ヶ月近い横這い状態が続いていました。3月上旬から上昇しはじめ、4月に入ってほぼピークアウトしました。ただ、フランスは現在でも毎日3万前後の新規陽性者があります。

以下、左の図が線形で右の図が対数表示です。スケールを確認できるよう、各国の線形のグラフに典型的な数字を書き入れています。

5.スペイン、米国

両国の共通点は、第3波の収束に引き続き上昇し、小さい山でピークアウトしたことです。日本もこのタイプですが、今回の第4波のピークアウトがまだで、上昇を続けています。スペイン、米国のピークアウトはワクチンの効果かと思われます。

6.ドイツ、スウェーデン

両国は絶対値は違いますが、振舞いがよく似ています。第2、3波が重なったツインピークになっており、それが収束すると再び大きな山になり、最近やっとピークアウトしたように見えますが、振動が激しいのでまだはっきりとは分かりません。両国とも死亡者数の下降の動向もよく似ています。ワクチンの効果で変異株の感染拡大がなんとか収まっているのではないでしょうか。

7.イギリス、イスラエル

両国ともワクチン接種率が高く、イギリス50%、イスラエル60%、変異株であるにも関わらず収束に向かっています。両国とも、下降フェーズにこぶのようなものが見られます。これまで、下降フェーズでこのようなものは観測されていないので、ワクチンの影響かと思われます。ワクチン接種後2週間以内に陽性者の上昇が認められるというような情報もありますので、そのような影響の表れかもしれません。いずれにしても、陽性者も死亡者も急激な下降を示しています。

イスラエルの図は左右とも対数表示で、右が去年の12月以降の拡大図です。

8.ブラジル、オーストラリア

最後に、図2の9カ国の含まれない2国です。ブラジルは、なかなか感染拡大が収まらず、連日8万を超える新規感染者が出ていましたが、4月に入り何とかピークアウトしたようです。大国ですので、地域差も大きく大変です。ワクチン接種率は10%位です。

オーストラリアは、最近2桁の陽性者が時折出ていますが、落ち着いているようです。鎖国とロックダウンを何度も続けてきましたが、最近ニュージーランドとの交流が始まりました。今後、どう国を開いていくか注目です。

以上、11カ国の近況報告でした。日本のワクチン接種はこれからが本番ですから、その効果が日本にも表れるのを期待しています。