もう企業への投資は古い

ある企業の株式や社債に投資をすることは、株式や社債という有価証券を買うのではなくて、その企業の営む事業に投資することである。また、企業に融資することも、同じように、その企業の営む事業に投資することである。そして、事業に投資するということは、その事業が生み出すキャッシュフローに参画することなのである。

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もっとも、厳密にいえば、キャッシュフローを生み出すためには、費用もかかるわけだから、入ってくるキャッシュのインフローと、出ていくキャッシュのアウトフローの差、即ち、ネットのキャッシュフローが投資の対象となる目的物である。

投資の本質は、一般化していえば、このネット事業キャッシュフローに投資することに帰着する。そして、伝統的には、投資とは、直接に事業キャッシュフローに投資するのではなくて、企業を経由して、企業経営に事業キャッシュフローの創出を委任することであった。故に、投資の主流は、古くから、企業の発行する株式や社債への投資なのである。

しかし、事業の構造が単純であれば、企業のような大掛かりな経営の仕組みは必要ないので、直接に、あるいは、ファンドといわれる共同投資の器を経由して、事業キャッシュフローに投資する手法がとられている。

例えば、不動産に投資することは、賃料収入というキャッシュフローに投資することであり、発電施設に投資することは、売電代金というキャッシュフローに投資することだが、そこでは、キャッシュフローを生む仕組みが単純なので、直接投資、もしくは、ファンド等を通じた投資方法が主に使われている。

要は、企業にしても、ファンド等にしても、事業を格納し、そこから生じるキャッシュフローを投資家に配分するための容器にすぎないのである。容器は、事業に性格に応じて、投資家の利益の視点から、最適なものが設計されればいいのである。

投資が企業への投資であるとする発想は、もはや古い。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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