尾崎都医師会長が薬剤師のワクチン接種に前向き発言

菅総理は、4月30日、総理大臣官邸で日本医師会・中川俊男会長、日本看護協会・福井トシ子会長との意見交換を行い、次のように述べた。

日本医師会長・日本看護協会長との意見交換 首相官邸HPより

医療関係者の皆様には、日頃より新型コロナとの戦いが続く中で、国民の健康と命を守るため、昼夜を問わず大変な御尽力を頂いてますことに、心から感謝申し上げます。

新型コロナ対策において、ワクチン接種こそが決め手となります。先日の会見で、医療従事者への接種を早急に終えるとともに、7月末を念頭に、高齢者への接種を終えられるよう、取り組んでいくことを表明しました。

ワクチンの供給は、6月末までにファイザー社だけで1億回分、供給される具体的見通しが立っており、残る最大の課題は、接種体制の確保です。このため、政府を挙げて自治体の接種計画の前倒しを強く働きかけるとともに、来月下旬には、東京と大阪に、自衛隊による大規模接種センターを立ち上げ、自治体の取組を強力に後押ししていくことにしました。それぞれの自治体において、平日の体制を思い切って強化するとともに、休日や夜間にも接種を進めていただきたいと思います。医療関係者の皆さんには、大変な御苦労を頂いておりますが、もう一段の御協力をお願い申し上げます。

政府としても、休日や夜間における接種単価の大幅な引上げや、集団接種に医師・看護師を派遣していただいた医療機関等への支援など、御協力いただける環境を整備いたします。

新型コロナという、正に国家レベルの緊急事態の克服に向けて、中川会長、福井会長におかれては、多くの医療関係者の皆様に接種への御協力を頂けるよう、全国の医師会・看護協会に、もう一度、働きかけいただけますように心からお願い申し上げます。(首相官邸HPより)

これを受けて、BSフジの『プライム・ニュース』で、東京都医師会会長・尾崎治夫、自民党ワクチン対策PT座長・鴨下一郎、医療ジャーナリスト・鳥集徹が議論していた。

鳥集氏は、なんと、ワクチン懐疑派。「ワクチンの接種を急げ」と鴨下・尾崎両氏が、医師の上から目線であっても主張していたのに対して、「副反応にも注意して急ぐな慎重に、7月中に高齢者を追えるなんて無理でしょう」なんて言っているので、お邪魔虫であった。

「自衛隊に接種させるのは抵抗がある人もいる」とか口走って、呆れられていた。あるいは、「高齢者7月中というのは、五輪と関係あるのでは」と口走っていったが、全ての国民にというなら分かるが、高齢者だけだし、7月中では五輪対応としては遅すぎである。医療ジャーナリストと名乗るにはお粗末だ。

鴨下氏は、日本大学卒の医師であって、尾崎氏とも密接な関係にある。言ってみれば、原発の問題を議論するのに、電力会社の社長と、OBで支援を受けている議員だけが呼ばれているようなものだ。

しかし、鴨下・尾崎両氏という政治と業界のなかで、熟練した話し手である両者の話は、それなりに詰まっており、逆にいえば本音が垣間見えて興味深いものだった。

鴨下氏は多くの国民がワクチン接種の順番が回っていることを強調した。ワクチンをして涙を流すお年寄りがいることまで紹介して、ワクチン接種を急ぐ決意を強く示していたのは、これまでに何をしていたんだということを別にすれば、心強い。

高齢者のそれほど長くない残りの人生のうちの貴重な時間が、家族とも友達ともあえないまま過ぎていく無念さを解消できるのは、ワクチン接種しかないのである。

尾崎氏は、7月中に終えろとか、初めから聞いていたわけでない。ワクチンの到着も遅れているので、8月で良いかと思っていたが、急げといわれたらできる範囲で手御力したいとのお言葉である。普通なら、ワクチンが届いたら遅滞なく一刻も早く接種を済ませたいと言うべきだが、日本のお医者さんにそんなこと期待しても無駄だろう。

しかし、注目されたのは、尾崎氏が医師だけで足りないなら、歯科医師などほかのドクター、それに自分のことろには薬剤師にも認めろという要望も来ているので総力体制でという発言。薬剤師まで含めて接種をする人の確保に尾崎氏が動いてくれるなら、ぜひとも誉めたい。

それに対して、鴨下氏は、歯医者さんの接種にも「期待しない」そうだ。というのは、歯科医師の接種には、①歯科医師の協力なしにはできない、②必要な研修を受けた、③接種を受ける人の同意を得た、の3条件がついているからだという。

とくに、「接種を受ける人の同意を得た」と言われてまでやりたくない歯科医師が多いのではということだ。たしかに、そんな条件付けられたら嫌だろうが、そういう基準を決めた側の鴨下氏が言うことか。

しかも、この鴨下氏は接種の報酬を政府は、通常、2,070円を、時間外2,800円、休日は4,200円に増額したが、それでも安いと言い張った。おまけに、「インフルエンザ・ワクチン接種は普通は3,500円くらいなので」といって、司会の反町氏から、「それはワクチン代含めてのことで今回はワクチン代は無料でしょう」とたしなめられる始末。

たしかに、4,200円はもう論外だが、2,070円という価格は、そこそこ繁盛している開業医にとっては魅力的でないかもしれないが、コロナ戦争で儲けようなんて思うほうがさもしい。それに、医師にとっては安くても、薬局で打てるようにすれば、薬剤師さんにとっては十分に魅力的な金額だ。

ベッド数にしても、努力してないわけでないという弁解をしていたが、当事者としての危機感はゼロ。一年間以上もたったのだから、欧米のように10倍、20倍の重症者が出ても受け入れられるベッド数を提供できないのを日本の医療界の恥だと思って欲しい。

いずれにしても、鴨下氏も尾崎氏も、口では医者らしく、努力する決意は述べてはいたが、死に物狂いでコロナ戦争を戦うという気概のかけらもない。

収穫と云えば、尾崎氏が薬剤師まで含めたワクチン接種の担い手拡大に前向きなことを言ったことくらいで、具体論になったら反対するというのは論外だが、ぜひ、積極的に歓迎する尾崎氏が言うかどうか着目したい。