撤退する飲食店、益々予約が取れなくなる飲食店

東京では、コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言により、営業時間短縮やアルコール提供が制限され、多くの飲食店が苦境に陥っています。繁華街の路面店が閉店して、テナント募集広告が貼ってある場所も珍しくありません。ぞの一方で、緊急事態宣言の影響で、益々予約が取れなくなっている繁盛店もあるのです。

Halfpoint/iStock

今週出かけた下丸子にある人気のお寿司屋さん(写真)は、緊急事態宣言で大変なことになっています。

元々はお好みで好きな時間に行けるお店だったのですが、あまりのコストパフォーマンスの良さに大人気となり、今では5時半と8時半の2回の入れ替え制で営業しています。

カウンター7席しかなく、ほとんどの来店客が帰りに次回の予約を取るリピーターです。

ところが、緊急事態宣言によって8時半からの営業ができなくなり、入っていた予約を全てキャンセルせざるをえなくなってしまいました。

その予約が、5時半からの予約に流れ込み、ただでさえ取れない予約が、さらに取れなくなっています。

週末の予約は、すでに来年の2月まで満席とのこと。平日も今年後半の冬の時期に何とか取ることができました。

しかし、経営環境はこちらも厳しいと思います。

2回転が1回転に減ってしまったので、収入は半減です。しかも、市場からの仕入れ量が少なくなってしまったので、材料費が割高になり、原価率もアップしてしまいます。酒類の提供ができなくなったのも売上にはマイナスです。

夜の売り上げ減少を補うためにランチも始めたそうですが、夜の売り上げほどには単価は上がりません。

このような小規模なお店では、東京都からの自粛協力金があるはずで、ある程度売り上げの減少をカバーすることができます。

しかし、少し大きめのお店になると、自粛協力金だけでは利益の減少を賄いきれません。

また、この寿司店のように常連客が予約をリピートする店であれば客離れにつながるリスクは小さいと思いますが、不特定多数の顧客を対象にするお店は客離れの心配があります。

緊急事態宣言による影響は、飲食店の業態によって大きく異なっていることがわかります。しかし、飲食店の体力を奪い取り、経営者の気力を失わせているのは、どの店舗でも同じです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。