新型格差社会では小学4年生で人生が決まるらしい

新型格差社会 (朝日新書)」によると、日本が階級社会になる前に、格差の是正をすることが急務だと言います。著者の山田昌弘先生は、「パラサイトシングル」「婚活」など現代社会の問題に見事な名付けをすることでも知られています。

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コロナ禍でさらに進むという格差拡大の何が問題かというと、格差があるということではなく、その格差が世代を超えて固定化されることだそうです。そしてそれは経済的な問題だけでなく、社会の基礎となる要素にも、傷を残し取り返しのつかないものになると言います。

いちはやく格差社会について指摘してきた著者であって、その慧眼には感服します。

その中で、「家族格差」「教育格差」「仕事格差」「地域格差」「消費格差」の5大格差を直視することを求めます。

たとえば、「教育格差」を見てみましょう。中学受験をできるかどうかでその後の人生ルートがある程度決まってしまうと言います。

しかもどの塾に入るかで、行く中学校が決まってしまうそうです。ぼくの周りの高学歴カップルにも、大手企業に勤務で、30年ペアローンで首都圏に住宅を購入して、さらに中学受験をさせる、レジャーなどの趣味も充実というパワーカップルはよく見かけます。けれども、とても格差社会の頂点とはとても思えません。不動産産業や教育産業に言われるがままに人生すごろくを振っているように見えます。

また、現在はコミュニケーション力が過剰に求められているため、親の教養の有無によってその能力に格差ができてしまうと言います。そのために子どもが小さいうちから投資をしたほうがよいということらしいです。

例えば、公務員試験ではペーパーテストさえ合格すれば、面接はほぼフリーパスだったけれど、しかし最近は、ペーパーテストの成績の比率が下がり、面接の印象がよくなければ合格できなくなったそうです。これも親の教養によって育まれたコミュ力が子供に引き継がれているので問題だそうです。

けれども、面接で必要なのはコミュニケーション力ではありません。面接試験で釣れるのは、「面接の上手な就活生」です。ですから、就活のコミュ力重視はそこまで真に受ける必要はないと思います。ほんとうにコミュ力のように仕事ぶりを重視してたら、レファレンスをとらないと無理ですが、そのような公務員試験は聞きません。

このようなことに煽られて教養だの中学受験だのに走ってしまう親御さんとお子さんの将来はどうなってしまうのでしょうか。

近年、日本の最難関大学である東京大学や京都大学に入学する学生の多くは、中高一貫校の卒業生だと言われています。だからといって、少子化の時代に毎年3000人も卒業生を出す東大はもはやエリートとは言えません。東大にたいして勉強もしないで入れるようなピンの学生はベンチャーに行くそうです。キリの学生は今まで通り国内大手指向で、古い名門企業とともにその選別機能は役割を終えていくかもしれません。

また、「出会い」のスタンダードとなりつつあるインターネットを利用したマッチングサービスにおいても、安定した職業の男性が有利な「買い手市場」になって格差が広がっているそうです。

けれども、男女どちらに限らず、条件で相手を選べる人間など限られています。相手あっての結婚。そんな単純なことを子供のうちに教えないから、一部の人はいつまでも結婚できないのではないでしょうか。

別に「格差社会」のせいではなく、世の中の仕組みをちゃんと教えてこなかったことが問題ではないか、というのが感想です。格差が大きすぎることは問題です。けれども、この格差社会の中で勝ち組になろうとして、よくわからない賭けに走ってしまう人がいるとしたら心配です。少ないとは思いますが。

いろいろな意味で、考えさせられる良著です。