自治体によるワクチン計画に大きな差が出ていて、それが自治体の首長への批判につながっている。
しかし、ワクチンの接種計画は、基本的にはその地域の医師会や主要病院の意向で決まっているのであって、遅れが出ているところの主たる責任は医師会や病院、つまりお医者さんたちにある。
もちろん、首長がまったく何もできない訳でないが、むしろ首長の腕の見せ所は、周知徹底など広報と、本当に必要としている人を優先する工夫くらいであって、全体のスピードは医師会と病院の「ご意向」をありがたく受けるしかない。
地域によってかかりつけ医を中心にするか、集団接種会場をメインにするか、集団接種会場での打ち手は地元の医師か人材派遣会社に集めてもらうかなども、医師会様、病院長様のご意向次第だ。もちろん、病院長も労働組合があればその要求には弱い。
だから、自治体の首長に発破をかける必要はあるが、困った首長が医者をこれ以上甘やかすことになっても困る。
むしろ、首長に要求するべきは、いったい医師にいくら払っているかも含めて医師会や病院との交渉はオープンにするように要求するほうがよい。あるいは、医師会や病院に早く打て、接種に協力しろとデモでもかけるべきだ。
「AERA電子版」が面白い記事を書いていた。ユニークな活動と、国への辛口の批判で有名な、兵庫県明石市の泉房穂市長は、以下のようにいっているらしい。
「兵庫県副知事が国からせっつかれているようです。周辺の自治体と意見交換しても、本音では大半の市長、町長は7月末までは難しいと言っている。ワクチンの打ち手を確保するために看護師、歯科医に頼めと国は言いますが、地元の医師会がOKしないと動けない。この説得で困っている。スムーズにいくよう国が調整するべきです」
そのあとに、ワクチンを国がなかなかよこさないという文句が続くが、それは、前段とは関係ないし、ワクチンの供給は出遅れたが、加速しつつあるし、ワクチン承認の遅れの戦犯がお医者さんたちであることを明石市長のような聡明な人が知らないわけあるまい。
共通の敵はお医者さんで、国と自治体は、行政機関として共闘すべきなのに、国に「どうしもて終わらせろと言うなら、まず、ごめんなさいと謝れと言いたいです」とか、上から目線でdisっては本当のワルが喜ぶだけだ。
また、7月末までに難しいと回答した九州地方の市長は匿名でこう語っているそうだ。
「医師会が『開業医は忙しい』と言うので、看護師、歯科医師にお願いしろと国は言いますが、勝手にやったら、次の選挙で落選ですよ。地方は医師会様なんです。国はわかっていながら、調整せずに自治体に押し付けている。本当におかしい。うちは打ち手不足で7月末どころか、8月末も難しいかもしれない」
この市長は、「できないと自治体の名前を公表するぞと国が脅してきましたが、ワクチンを予定通り送って来ないのに、あまりに理不尽です」といっているそうだ。たしかに、ワクチンの到着が遅れたのは事実だが、国だって間違いなくこういう日程で届けられますなんていったわけでない。
遅れたら遅れたなりに対応するべきで、それを予定通りのスケジュールでないから無理だ、医師会と選挙が怖いから交渉できないと開き居直ったこの市長は、市民の命を守る首長としての資格はない。
さらに、首長さんたちにお願いしたいのは、自分たちと関係者にお手盛りでワクチンを横取りして先に接種し人たちは、それだけでも批判されるべきだが、さらに不当な利得をしていないか、きちんと協力してるかを住民はチェックし、不満ならそちらに批判の矛先を向けるべきだ。
開業医などに不当な上乗せをしていないか、集団接種会場での協力に不当に高い対価が払われていないか、情報公開がされるべきだ。
それから、医療従事者優先で誰に接種したか不正がなかったかを究明すべきだ。本当に医療に従事していない人にかなり横流しされている可能性がある。
そうでなければ、300万人の見込みが480万人になるはずない。厚労省がお医者さんたちの要求でどうとでも読める基準をつくった。眼科でも美容整形でも対象になるのもおかしいが、さらに、患者に直接に接する可能性が高くない人や、非常勤でも何でもいいようになっているので、たとえば、家族を新たにちょっとだけ手伝わせたら対象にできる。
少なくとも、医療機関ごとに何人名簿に提出したか人数は一般公開して欲しい。まさか小さな診療所で数人以上なんてないだろうから、普段、患者さんが見ている以上の人数が出ていたらそれは不正だ。
もう接種してしまったりしているので、いまさら、止められないが、せめて不正行為を摘発して、お手盛りと不正のやり得にならないように、一矢を報いたいものだ。