大阪や神戸で新型コロナウイルスの大規模なクラスターが起こりました。いずれも介護施設でした。近隣の介護施設で起こったクラスターの最初の発症者は、デイサービスの利用者でした。
今のところ、私の勤務先ではコロナウィルスの感染者はいませんが、似た例として、4年前に起きたインフルエンザのクラスターを振り返ってみようと思います。
クラスターの始まりは58才の女性職員でした。そのシーズンはそれまでにも2人の職員(52才女性・41才男性)がインフルエンザに感染しましたが、本人のみの発症で入居者への感染はありませんでした。
なぜ、3人目の職員がクラスターの原因になったのか。それは勤務形態の違いでした。
前の2人は日勤者で、3人目は夜勤者でした。日勤帯であれば、1人ぐらい欠勤しても他の職員が残業などしてカバーが出来ます。しかし、夜勤帯は最小限の人数で回しているため、欠勤する場合は他の職員とシフトを交代する必要があり、夜勤者は「休みたい。」と言い出し難い環境がありました。
余談ですが、年長の職員ほど体調が悪くても無理して出勤する傾向にあります。若い職員は無理せずすぐに休みますし、そもそもあまり病欠をしません。若い職員の欠勤理由ダントツ1位はお子さんの体調不良です。
ですから、若い職員が施設の高齢者にコロナウィルスをうつしているという世の中の論調に、私は全く同意が出来ません。
話を戻します。
クラスターになった原因は、大きく3つあります。1つ目は職員から感染し発症した方の隔離対応が遅れた事、2つ目は換気や消毒、湿度の調整への意識が低かった事、そして3つ目は『時期』です。
クラスターの始まりは3月の中旬でした。11月初旬に実施した予防接種の効果がなくなっていた可能性もあります。
そもそも季節の変わり目は体調を崩される高齢者が多く、例年、3月〜5月は亡くなる人数が他の時期より多いのです。
結果として、約3週間の間に入居者と職員の9割強に発熱などの症状が出ましたが、インフルエンザそのもので亡くなった入居者はおられませんでした。
しかし、隔離対応による筋力低下、認知レベル低下、嚥下機能低下など、体力は徐々に低下し、最期は誤嚥性肺炎や心不全などで、例年の同時期よりも亡くなられた方が多かったと記憶しています。
勤務出来る職員の数も減り、ケアが行き届かなかった事も要因の一つです。通常、職員がインフルエンザに感染した場合は、解熱後5日間の自宅待機ですが、介護者不足のため、解熱後3日目には出勤しなければならい状況でした。最後まで休まず頑張ってくれたのは、20代〜30代の男性職員たちでした。
インフルエンザウィルスには特効薬があります。発症しても、服薬すれば2日ほどで症状が軽減していきます。しかし、新型コロナウィルスは特効薬がありません。症状がどれくらい続くのかが最も不安な要素です。
新型コロナウィルスの予防については、現在、7月末頃までに高齢者のワクチン接種を完了すべく世の中が動いています。
ワクチンの効果は半年ほどと聞いています。ワクチンがきれる来年1月以降、再び感染者が増え、介護施設にクラスターの波がやってくるのではないかという不安が拭いきれません。
予防は最も大切です。しかし、予防の網をくぐり抜けてウィルスはやってきます。少しでも早く特効薬が開発されることを切に願います。
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