衆院選イヤーに選挙ポスターを候補が貼るのは時代遅れか --- 松橋 倫久

選挙の際のポスターの貼り方について、疑問がある。

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現状では選挙管理委員会が設置した掲示板に、各候補が貼り付ける方式を採っている。ポスターは各候補が印刷会社へ発注して作ってもらうのが普通である。地方議会議員の選挙の場合、その自治体に選挙用ポスターの公費負担制度の規定がある場合には、一定限度額の範囲内で公費負担とすることができる。ただし、この制度を利用するためには、供託金没収ラインを超える得票をする必要がある。

そもそもITがこれほど進化した時代に、ボードに各候補者がポスターを1枚1枚手作業で貼り付けるというやり方は、手間ばかりかかってメリットが無い。ネット選挙が一般的になれば、選挙管理委員会に顔写真のデータを提出し、選挙管理委員会の管理するホームページで公開すれば良いだけだ。

ただ、現状では投票の参考にネットを見ている人が10%程度というデータもあるので、選挙のIT化は今後も進んでいくと思われるものの、現実には有権者の側でITを活用して情報収集して、投票に臨んでいるケースはまだ多くはないと思われる。しかし、投票先を決めるためにITを活用したり、ネットで投票したいという需要は、今後大きくなっていくと思われる。

選挙が今すぐにIT化できないなら、ポスターをどうするか。公費でポスターを刷って、それを貼るのなら、最初から掲示板に候補者の写真を印刷すればいいのではないか。最初から顔写真が印刷されたボードを設置すれば、各候補者がポスターを貼る手間が省けるのにもかかわらず、ボードを設置する手間は別段変わらないのだから。

もしコストがかかるようなら、掲示板の数は減らしても良いのではないか。選挙用ポスター掲示板の数は、公職選挙法施行令第111条を根拠としている。昔と異なり車社会になって、人々の行動範囲も拡がっている。この基準が適当かどうかを吟味しても良いのではないか。

選挙のIT化も印刷したボードの設置も、印刷会社にとっては望ましくないことかもしれない。

今年は衆院選イヤー。選挙がせっかくIT化へ向かうのなら、選挙にかかるコストを引き下げる方向で、ITを導入するのが普通の考えだと思う。

松橋 倫久
1978年青森県生まれ、元青森県庁職員。東北大学を経て2002年青森県庁に奉職。在職中弘前大学大学院修了。統合失調症を患い2016年同庁退職。現在は求職活動の傍ら、自治体行政のあるべき姿を研究中。