アメリカの分断は近づくな危険

親密なアメリカとイスラエルの関係

アメリカは伝統的に親イスラエル政策を外交政策の軸として置いてきた。

Oleksii Liskonih/iStock

トランプ政権下で決定されたエルサレムの首都認定、大使館の移動は識者を驚かすものではあったが、元々は民主党の大統領であったクリントン政権の下で決まっていたものでもあった。また、その後のブッシュオバマも実際に実行はしなかったもののエルサレムがイスラエルの首都だという見解は党派が変わっても踏襲していた。加えて、アメリカは長年イスラエルに対して軍事援助をしており、オバマ政権末期にはその額が380億ドル(約3.9兆円)に達した。さらに、国連がイスラエル人の入植活動を国際法違反だと非難してもアメリカは断固としてイスラエルの非を認めようとしない。

今回のイスラエル・パレスチナ間の戦闘に対するアメリカの態度を見ていても、イスラエル寄りの姿勢は揺るがないように思える。

入植地問題を巡ったイスラエル人とパレスチナ人同士の小競り合いを受けて、ガザ地区を拠点とする武装勢力はハマスは抗議の意を込めて、ミサイル130発ほどをイスラエルの都市テルアビブに向けて発射した。

これに対し、自身が汚職疑惑を抱え、2019年以来5度目の選挙に突入かもしれないという政治的混乱の最中に居るイスラエルのネタニヤフ首相は反撃に出た。ネタニヤフ氏の号令の下でイスラエルはガザ地区への空爆に加え、地上部隊まで派遣し、ミサイル攻撃の復讐を果たそうとしている。

一方で、イスラエルが先に攻撃を受けたのだから、バイデン大統領が述べるように「自衛の権利を保持している」イスラエルは反撃をする権利も持っているが、イスラエルは受けた攻撃に対して不釣り合いな攻撃をガザ地区に対している向けている気がしてならない。現時点でイスラエル側の死傷者は10人前後であるが、ガザ地区の方に目を向けてみると、死傷者はイスラエル側の約20倍であり、58人の子供が命を失っている。

しかし, そのような批判がありながらも、アメリカ政府は冷淡であった。イスラエルに対する配慮から、明確にイスラエルの過度な攻撃を非難しようとせず、国連決議を出して戦闘終結を勧告することさえもアメリカは妨害していた

「民主的な」外交政策

アメリカがイスラエルを支援する理由はシンプルである。イスラエル寄りの政策を望む有権者が一定数国内に存在しているからである。筆者独自の言い回しだがアメリカの外交政策は有権者の意向が他国と比べて如実に反映されている、言い換えるならば「民主的な」ものであると考える。そのため、有権者の声が大きければ大きいほど、有権者に直接関係しないかのように思われる外交政策に影響を与える。

イスラエル寄りの政策を望むグループは主にふたつアメリカに存在する。ひとつが、AIPACである。AIPACというのは親イスラエル政策を推し進める圧力団体であり、選挙期間中には集会に大統領候補たちがスピーチをしにくるほど無視できない政治的影響力を誇っている。

二つ目は宗教右派と呼ばれる人たちで。アメリカ国内には約3割ほどの人々が聖書に書かれていることを教条的に信じると言われており、聖書にイスラエルが神なる地と言及されていることから、アメリカがイスラエル寄りの政策を取ることを彼らは求める。そして、そのような人々が相当な数いることも考えると政治家は選挙に勝つためには親イスラエル政策を取らざるを得ず、それがアメリカの伝統的なイスラエル寄りの政策に寄与していたという見方もできる。

だが、それがこれからも永続的に続くものだと必ずしも言えないというのが筆者の見解である。

党派争いの道具と化したイスラエル

2014年頃と現在ではアメリカ内に存在するイスラエル観は多様になってきているだけではなく、少数派と思われていた意見が一定の支持を集めるに至っている。

もし7年前に少しでも米政治家がパレスチナを擁護するような発言をしていただけで袋叩きにあっていた。しかし、その時と今を比べると隔世の感があることを否めない。

近年、民主党は全体としてイスラエルに対して批判的になりつつある。2018年にイスラエルがガザ地区の住民を「虐殺」していると言及した当時新人だったオカシオコルテス現下院議員が民主党内で長年イスラエル寄りの政策を支持してきた大物議員クローリー氏を予備選で破った。また、今回のイスラエル・パレスチナ間の戦闘の激化を受けて、民主党上院議員の半分以上にあたる28人が早急に停戦することを主張し、態度が定まらないバイデン政権に対して圧力を加えている。

この短い期間で民主党内でイスラエル政策に関する考え方が変わったのは、アメリカの政治的分断の副作用だと米保守系コメンテーターのサガー氏は述べる。2015年にネタニヤフ首相はイランに対する融和姿勢を示すオバマ政権をけん制するために、アメリカ議会でオバマ政権を非難するスピーチをし、事実上オバマ大統領の顔に泥を塗った。そして、そのスピーチは是が非でもオバマを批判したい共和党の主導で実現していた。

しかし、ネタニヤフ氏の意向に反し、米議会でのスピーチは逆効果だったとサガー氏は主張する。なぜなら、イスラエルを党派争いの道具にしてしまい、民主党内での嫌悪感を増長させたからである。

アメリカの分断に身を投じることは賢明ではないことをイスラエルが証明してくれたのかもしれない。