アストラゼネカ・ワクチンは希望者優先で接種せよ

八幡 和郎

厚生労働省はアストラゼネカ社製と米モデルナ社製のワクチンを薬事承認したが、アストラゼネカ社製は欧州でごくまれな副反応として血栓症が報告されたことから、当面は使用せず、対象年齢や使い方を引き続き議論するとした。

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そもそも、これだけワクチン接種が遅れているなかで、飛行機に乗って死亡事故に遭う確率の10分の1の危険を理由に使用開始を遅らせるのはふざけているし、「対象年齢や使い方を引き続き議論」などといっても一定の年齢以上に優先的に使うという結論は最初から見えているのである。

新たな集団接種会場をつくって、とりあえず、高齢者に使えばいいだけの話だ。百歩譲っても、若干副反応が多い可能性があるアストラゼネカの製品だが、それでもいいという国民を募集して希望者に接種すればいいことだ。

若い人でも、仕事の関係などでどうして早くしたい、なんなら海外へ接種ツァーに行ってでもという人も多い。わたしだって、ファイザーのものより先に接種してくれるというなら、迷わずに自分でもするし、家族にだって勧める。

ところが、毎日新聞が報じるところによると、「英製薬大手アストラゼネカが開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンを巡り、調達契約を結んだ一部について、途上国など他国に提供する案が政府内で浮上している」そうだが、これを考えている「政府部内の人間」の頭はおかしい。

国内では既に米企業2社のワクチンの使用を前提に接種体制を構築。2社分で9月末までに接種対象となる国民に行き渡る必要量は確保できたとするが、もっと加速して接種できるならするべきだ。

遅らせるというのは、東京五輪を開催させないための陰謀くらいにしか考えられない。接種の担い手が不足なら、さっさと薬剤師などに開放すべきだ。

毎日新聞の記事によると、「アストラゼネカ社製は、冷凍管理が必要な米2社のワクチンとは異なり、冷蔵保管ができ、小分け配送も可能なため、政府は地域の診療所などでの使用を想定する。ただ、希望する自治体がどこまであるかは見通せないのが現状だ。アストラゼネカ社から調達するのは1億2000万回分。うち3000万回分は原液を輸入するが、9000万回分は国内企業に委託して原液から国内生産する。既に原液を専用容器に充塡(じゅうてん)する「製剤化」も一部始まっている。保存できる期間は6カ月で、この間に使い切らなければ破棄せざるを得ない可能性がある。欧州では接種対象を高齢者に限定する国もあり、国内でも年齢制限を設けた場合、必要量は限られる。供給先の確保は喫緊の課題だ。」

そこで、「調達契約を結んだ一部について、途上国などに提供する国際枠組み「COVAX」(コバックス)を通じて他国に提供する案が政府内で浮上している」というのだが、いかにも発展途上国に失礼だし、ふざけた話としか言いようがない。