自治体は一年間何をしていたのか:混乱続く自治体現場

「病床確保問題は一年間努力してこなかった知事のせい」

4月26日、そう言って、吉村大阪知事は有害、井戸兵庫県知事は無能と酷評した泉明石市長の会見が大きな話題を呼んだ。その後、有害・無能発言は言い過ぎだと撤回をしていたが、一方で芯を食った発言だと評価する声も多かった。

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正直、私は、都道府県に限らず市町村に対して同じような思いを感じている。

一年前ならいざ知らず、一年経った今も、京都市のコロナの相談ダイヤルはかけ続けても数時間はつながらない。まるで人気ライブを予約する「チケットぴあ」さながら、繋がったらラッキー状態だ。高熱でうなされコロナかもしれないと不安視する市民が受話器を片手にひいひい言っている状況が続いている。つながっても、検査を積極的に受けさせられる体制も出来ておらず、濃厚接触者判定基準は甘いままで、検査に至らない様子見状態で待機している高熱患者の家族は濃厚接触者にはならず、コロナの不安を抱えたまま、日常の学校や会社に通っている。

また、京都市は2020年度の残業が1000時間を超える職員が38人、最多は1995時間という過労死ラインを軽く突破し、いつ過労死が出てもおかしくないカオス状態だ。忙しすぎることで発生する人為的ミスも顕在化していないだけで様々なところで発生していることは想像に難くない。

加えて、ワクチン接種が混乱に輪をかける。国がルールを策定するのが遅かったとはいえ、ある程度これらも想定範囲内のこと。もっとしっかり備えられたのではないかというのが市民の本音だ。

暇な職員と過労死寸前の職員

上手くいっていないことだらけのコロナ禍、要因はいくつもあるが、私が痛感している一番の問題は、人材の確保の問題だ。実はここにこれらを解決する大きなカギがある。

看護師や保健師が足りないということは日々ニュースになっているが、そこではない。

コロナ関連部署自体に人員が不足しているのだ。単純にコロナの相談ダイヤルは人員と回線を確保すれば対応できる。保健所は保健師が足りないというが、保健師を確保できないなら保健師のサポートをする人材を確保すればかなり負荷は軽減される。資格者が限られているのは仕方がない。その場合、サポート体制を厚くすることで解決できるのは、市長が一番わかっているはずだ。なぜなら市長は一人しかいないから大量の秘書がそのサポートをし、円滑に業務をまわしている。同じように人員の大幅加配をすれば、現場作業はスムーズにかつ問題は適切に処理されるようになる。病院、クリニックへの連絡調整、苦情窓口、対象者等への電話連絡など、一定の経験を積んだ人材なら出来る職務はいくらでもある。

必要なのはお金じゃない、危機意識と体制づくり

「財政難の京都市にそんな人を雇うお金はない!」なんて声が聞こえてきそうだが、それは違う。配置転換すればいいだけのことだ。事実、先述の明石市は保健所の人員を4倍に増やしたが、他部署からの異動で賄っており、そこにコスト増はない。当然だがコロナで忙しくなる部署があれば、コロナで暇になる部署もある。不要不急という言葉が定着したが、事業にも不要不急の事業は沢山ある。そうした部署から時限的に職員を異動させる、また一時的に応援を派遣するという体制が出来ていれば、これらの課題の多くは解決させることができた。

これが出来ないところに自治体の危機管理能力の弱さがある。私は以前、災害時の緊急対応の為に、機動的な人事システムを組むべきだと提唱したことがある。集中豪雨の時、現場の前線基地になる区役所は人が足りなかった。職員不在の避難所が続出、物資供給の連絡ラインも滞り、苦情や相談ダイヤルは一時的にパンクした。そういった課題を回避するために、緊急時の流動的な人事異動、各部署からの応援体制の強化など仕組みを作るべきだと提案したが退けられた。

自治体の危機管理能力で差が

コロナ禍は長期化し、一年を超過した。十分に体制を作り変える時間はあったはずだ。時限を区切った人事異動やワクチン接種対策向けの一時的応援体制など作ろうと思えば作れたはずだ。多くの自治体ではそういう発想そのものがなかったのかもしれない。それに加えて、「仕事はやる奴がやればいい」「私は出世したくないから」という職員が多いと言われる行政という組織では、「みんなで何とか乗り越えよう」という意識が希薄だ。だから、深夜残業に及ぶ職員がいる一方、それを傍目に定時にしっかり帰る職員が沢山いる。定時に帰ることは悪いことでは勿論ないが、一部の頑張る職員に極端なしわ寄せがいく今の自治体の構造自体にも問題の一角は見え隠れする。

今回のコロナ禍で見えた自治体の弱さは、財政だけでなく、対応の遅れや不適切な業務執行などにも表れ、それはこうした常日頃の自治体の体質の現れとも言える。

それを今さら騒ぎ立ててもどうしようもないが、とにかく自治体は明日にでも人員配置の見直しを早急に進めるべきだ。そうすれば目の前にある危機は一定緩和することだけは間違いなく出来るはずだ。