中国上海の「アジアの聖母」への祈り

長谷川 良

23日は「聖霊降臨祭」(ペンテコステ、独Pfingsten)だった。そして24日は「聖霊降臨祭マンデー」(pfingstmontag)で祝日だ。キリスト教の最大の祝日の一つ、「復活祭」(イースター)は今年は4月4日だった。その翌日4月5日は「イースター・マンデー」と呼ばれ、オーストリアなど欧州のカトリック教国では祝日で休みだ。同じように、「聖霊降臨祭マンデー」もオーストリアやドイツでは休みだ。日本では24日は月曜日で新しい一週間の始まりだが、オーストリアは休日で静かな朝を迎えている。当方は、近くの教会の鐘を聞きながら、このコラムを書き出している。

中国上海の「余山の聖母像」 バチカンニュース2021年5月23日より国連で取材活動に専心していた時、国連カレンダーと通常のカレンダーで祝日が異なっているケースがある。国連カレンダーではイスラム教の祭日も休日に入っているから当然かもしれない。オーストリア社会が平日で、国連カレンダーで祝日の日など、当方はのんびりと市内を散策し、チボなどのコーヒー店で1杯のメランジェを飲むのが好きだった。働いている人々を見て優越感に浸るためではない。普段は落ち着いて市内を歩くこともないので、店がオープンしている日で国連カレンダーの休日の日などは絶好のチャンスだから、直ぐに外に散策に出かける。ロックダウン(都市封鎖)が19日、7カ月ぶりに解除されたとはいえ、不必要な外出は控えるようにしている。

さて、「聖霊降臨祭」だが、新約聖書「使徒行伝」2章を読むと、「イエスキリストの十字架の死後、イエスは復活して40日間弟子たちに現れて神の国のことを語られた。弟子たちに、エルサレムから離れないように、そして彼らが聖霊によって、バプテスマを授けられるだろうと諭し、彼らの見ている前で天に上げられた。五旬節の日に120人の信徒たちが集まって祈っていると、神から聖霊が降りて、一同は聖霊に満たされ、いろいろな他国の言葉で語りだした」という。そしていままで信仰の乏しかった弟子たちも生き生きして、殉教をも恐れない強い弟子としてイエスの教えを世界に述べ伝えていくわけだ。「クリスマス」、「復活祭」、そして「聖霊降臨祭」はキリスト教の3大祝日といわれている。

キリスト教信者ではない人にとって「聖霊」といっても理解しにくいだろう。悪魔の存在と同様、聖霊の働きも現実的なものだ。イエスは「聖霊の働きがなければ真理が理解できない」といっている。無数の知識や情報が錯乱する現代社会に生きている者にとって、聖霊は何が真理かを示してくれる羅針盤のような働きをする。聖霊の働きは、具体的には愛、喜び、平和などとなって表れる。

「聖霊降臨祭マンデー」の日、バチカンニュースを読んでいると、ローマ教皇フランシスコは厳しい環境圏にある中国のキリスト信者のために祈り捧げるようにアピールしている。バチカンと中国は依然、外交関係を樹立していない。両国は司教の任命問題で妥協したが、中国国内の信者たちの信仰の自由は厳しく管理、制限されている。フランシスコン教皇は前任者ベネディクト16世と同様、中国上海市松江区の余山(シェシャン)の聖母マリアへ祈りを捧げている。余山の聖母マリアは「アジアの聖母」と呼ばれ、中国カトリック教会の有名な聖母巡礼地だ。

ちなみに、ベネディクト16世は2008年5月16日、「余山の聖母への祈り」の中で、「余山の聖母よ、イエスについて語るのを決して恐れることのないよう、中国にあって毎日の苦労の中でも信じ、希望し、愛し続けているすべての人々の努力を支えてください。余山の聖母巡礼聖堂にあるあなたのご像は、愛を込めて大きく両手を広げ、御子を世界に示すべく天に高く掲げています。教会の礎聖ペトロの岩にしっかりと一致し、常にこの愛の信じうる証人となれるよう、中国のカトリック信者たちを助けてください。中国の聖母、アジアの聖母よ、いつも私たちのためにお祈りください」と祈っている。

習近平国家主席はベネディクト16世やフランシスコ教皇の「余山の聖母への祈り」を聞いたならば、怒り出すかもしれない。「宗教の中国化」に邁進する同主席は、「内政干渉もいいところだ」と撥ねつけるだろう。

ところで、世界の共産党政権は70年台を超えて発展できない。ソ連共産党しかり、そして中国共産党政権も同様だろう。マルクス・レーニン主義を掲げたソビエト連邦共産党政権は1922年12月30日から1991年12月26日まで、69年で幕を閉じた。中国共産党政権は1949年10月1日に発足、今年で72年目だ。中国共産党政権は現在、米中冷戦下に直面している。

世界の共産主義は、政権発足から70年を突破し、それ以上長期存続できず終焉を迎えるという「歴史の法則」があるとすれば、中国共産党政権は習近平主席が最後の国家主席となって幕を閉じる日が案外近いかもしれない。それ故に、と言ってはおかしいが、習近平・中国共産党政権の強権政治が強まってきている。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年5月25 日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。