五輪とコロナに埋もれた7月都議会選の行方

岡本 裕明

7月4日に都議会選が行われます。今まで衆議院の解散説が何度となく噂され、コロナとオリンピックの開催の是非論も含め、この都議会選がなんとなく目立たない存在でした。衆議院の解散は少なくともこの都議会選まではなさそうですし、オリンピックを巡る駆け引きの中でキーパーソンである小池都知事がだんまり状態になっていることからことの行方が読みにくくなっています。

Ryosei Watanabe/iStock

都議会は都民ファーストが第一党で17年の選挙で55席を取る大勝、自民党は57席から23席への大敗を喫したのはご記憶にある方も多いかと思います。自民敗戦の要因の一つは自民が公明との連立を果たせなかったこと、小池人気に都民ファが乗じることができたことが最大の理由です。ところが当の小池氏が選挙翌日に都民ファの代表から退き、特別顧問になったことは都民ならず、多くの人を「あっ!」と言わせました。

さて、今回の都議選に対して自民党は並々ならぬ決意を示しており、公明と再度、連携し両党合わせて過半数の64議席奪取を最低目標としています。

一方、都民ファ特別顧問の小池氏は都議選に対して5月21日の定例記者会見で「都民を第一に考えて行動される改革派に、エールを送っていきたい」と述べるにとどまっており、明白な都民ファへの肩入れとは言い切れない状態となっています。

その伏線には都民ファそのものの運営に不満を持つ議員が次々と離党や辞職をしており、55議席だったものが現在は46議席まで減らしていることがあります。党の運営はもともと小池氏の秘書だった荒木千陽氏がいろいろ問題のあった野田数氏の後を引き継ぎ17年から代表を務めています。ただ、離脱者、辞任者は荒木氏の時代で起きており、特に昨年から今年にかけて一気に増え、党の運営そのものの手腕に疑念が持たれているといってもよいと思います。

また、都政そのものがコロナ禍でまったく目立たないものとなり、テレビを見ても小池さんは出るけれどコロナの話ばかりで都政や都議会そのものに焦点が当たることはなく、都民も都民ファの活動を評価できる材料がなくなっているのが現状でしょう。

一方、自民党都連はかつての小池氏との敵対関係を修復しつつあります。自民党からすれば二階氏が後ろに控えていることもあり、小池氏との離反は得策ではないと考えているのでしょう。小池氏としても運営がうまくいかない都民ファを切り捨てる選択肢は持っているとみています。特別顧問というのは細い紐一本でつながっているようなもので小池氏の個人プレイぶりを考えればそんな紐は邪魔だと思えばいつでも切る覚悟はあるはずです。

オリンピックへの判断が遅れていることも災いしています。やるやらないという議論があちらこちらで湧き上がる中、海外の参加選手からは「どっちかはっきりせい!」という声も上がっています。この辺りの煮え切らないところが日本らしいところで力技が出来なくなり、寝技で時間を稼ぐような状況にあります。

小池氏のオリンピックへのだんまりは当然ながら自分の政治家生命において最善最良の選択肢が何処にあるのか、模索しているわけで案外、政権与党の自民党と歩調を合わせ、自分の単独判断といわれるのを避けているようにも見えます。とすれば小池氏が都民ファへの支援はそこそこにしてもっと大きな果実を自民党に見出す可能性は否定できないと思います。(実際、小池氏の直近の会見の様子からは姿勢からは表向き、五輪をやる前提の話しぶりです。但し、その本心はやってもやらなくてもどちらにでも変化できる都合のよいポジションを取っています。

1989年からの都議選を分析したアンケートで「選挙に於いて政党を優先するか、候補者を優先するか」という問いに対し政党優先が概ね4割程度となっていますが、09年の選挙の時だけは6割近くまで跳ね上がり唯一、過半数越えとなっています。09年と言えば民主党政権下で世の中がガタガタの時。これから類推すればコロナで皆が苦しい今は政党を選ぶ傾向が強まると見え、政治的手腕に欠けた都民ファが大敗する公算が大いにあり得るシナリオです。

とすれば小池氏は二階氏のパワーが健在である今のうちに自民との関係を修復し、菅政権後を頭に描くのではないかとみています。小池さんはある意味、小泉純一郎氏と似ており、選挙民には人気があるけれど政党という枠組みからは異端視されたり、一匹狼的な存在に見えます。

都民ファが仮に大敗すれば自分の直接的後ろ支えがない都議会の上に鎮座するより、国政に再び返り咲くこともオプションに入るかもしれません。もちろん、その条件は閣僚の中でも上の方のポジションなら、ということでしょうけれど、小池氏は自民の男性議員はともかく、女性議員とうまくやっていける感じは微塵もないと思います。これが最大のネックでしょう。

そんな駆け引きがこれから一カ月の間、都議会選挙を巡って行われます。オリンピック開催問題や緊急事態宣言の中に紛れて目立たない状態ですが、選挙までの間、キーパーソンの発言は重要な意味を持つかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年5月26日の記事より転載させていただきました。