マドゥロ大統領のベネズエラ金密売ルートが明らかに

原油の産出が減少している上に米国からの制裁でベネズエラは苦境に立たされている。マドゥロ大統領政権は、金を密輸して外貨を稼いでいるというのは公然の事実だ。ところが、その密売ルートについて憶測はできても、確たる証拠に欠けていた。

VENEZUELA, ORO SE ESTÁ VENDIENTO EN SECRETO A EAU.  23-05-2021.

暫定政府の外交を担当している国民議会元議長のフリオ・ボルヘス氏は3月2日、ワシントンを訪問した。米国財務省、その翌日には上院外交委員会に出席してこの密売についての調査報告を行ったのだ。

マドゥロ大統領 ABC INTERNATIONAL より

その内容の一部がスペイン代表紙のひとつ「ABC」(3月4日付)と裏情報に良く通じているアルゼンチン電子紙「インフォバエ」(3月3日付)にて明らかにされた。その内容の主要点を以下にまとめることにする。

ボルヘス氏が明らかにしたのは、現在この密売の中心は、アラブ首長国連邦だということだ。昨年のマドゥロ氏の同国との取引は、10億ドル相当だったと指摘した。

その取引の手口は次のような過程を踏んでいると説明する。

ロシアのモスクワからプーチン大統領の一連の特別機(大統領専用機ではない)と関係を持っている会社ユーロフェイ(Eurofei)が所有しているボーイング757-200がある。マリ共和国のバマコ・セヌー国際空港に向けて飛び立つと、ほぼシンクロナイズされたかのように現金を積んだアラブ首長国連邦の飛行機がバマコ・セヌー国際空港に向かうことになっている。両国の飛行機が同空港に到着すると、後者の飛行機に積んでいた現金を前者の飛行機に積み替える作業を行う。その後、現金を積んだロシアの飛行機はベネズエラのマイケティア国際空港に向かう。同空港では積んでいた現金を夜中に積み下ろす作業を行う。その後に用意されていたトランクに詰めている金を同機に積み込むという。

そして、ベネズエラの金を積んだロシアの飛行機はバマコ・セヌー国際空港に戻る。そこでアラブ首長国から到着した別の飛行機に積み替える。あるいは、その前に空港の近くの精錬所でベネズエラ産の金であるという証拠を消す為の精錬を行うのだ。

この追跡調査をしている期間中に同じロシアの飛行機が少なくとも8回の往復フライトを行ったそうだ。1回の積み替えで、28個のトランクを確認できたという。その中には恐らく5100万ユーロ(61億2000万円)が入っていたと推測される。

この密売を組織しているのはアラブ首長国連邦にある金融企業ノール・キャピタル(Noor Capital)だとしている。この密売取引によってマドゥロ大統領と彼を囲む側近らが政権を維持できているということだ。

そしてこの取引を実際に指導しているのはフランス人オリビエ・クリオル氏という人物だいう。彼は以前ノール・キャピタルに勤務したことがあり、またアフリカで違法な取引活動にも関与したことのある人物だという。

なぜこのような緻密な追跡調査ができたのかという疑問に対し、ボルヘス氏はこう答えた。ベネズエラから不法に金が持ち出されていることに強い憤りを感じている軍部の一部将校がいる。その機密情報をボルヘス氏ら暫定政府に流したのが理由だ。

また別の情報として、組織犯罪を専門に調査しているダグラス・ファラー氏がラテンアメリカの出来事を広く報じている電子紙「ディアリオ・ラス・アメリカス」(4月11日付)に中米のニカラグアを経由してベネズエラの金が密輸されていることを明らかにした。同紙によると、次のような過程を通してベネズエラの金が密売されているということだ。

まずベネズエラから違法にニカラグアに金を送る。ニカラグアではそれをあたかも自国産であるかのようにして外国市場で密売するのだという。

ファラー氏が同紙に説明しているのは、金の価格は高値で、密売における取引上の危険性は低いという。このためこの数年この密売が拡大しているということだ。さらに同氏が付言しているのは、金は麻薬や原油よりも生産量が伸びている。金を商業ベースに乗せるのはグローバル市場において合法だ。コカインの場合のように違法ではない。金は合法で、しかも多くの人がこの活動で生計を立てていると語っている。

このようにして、マドゥロ政権は原油では稼げない分を、金でまかなっているということだ。