オリンピックでは検査が大事という矛盾

記者の「いつ頃になると1日百万回ワクチン接種が可能になるのか」という質問に対して、菅首相はいつものように意味のないコメントから始まり、最後に「6月中旬くらいには・・・」と回答した。

5月27日時点での高齢者への接種回数は約400万回であるので、仮に5月28日から1日百万回接種体制ができて、かつ、7月31日まで休みなく65日間接種を続けたとしても、6500万回の接種となる。400万+6500万=6900万であるので、高齢者3600万人X2回=7200万回には届かない。しかし、受けたくない人、受けることが難しい人もいるので、ギリギリ間に合う数字だろう。しかし、6月中旬に1日100万人態勢ができるのであれば、数字は大きく下回る。7月末までに高齢者の接種は終わらないと認めているような「6月中旬くらいには・・・」1日100万回接種が可能だという発言である。この数字に突っ込みをいれるメディアはない。

準備ができれば、6月中にも65歳未満の持病持ちの方に接種を開始するというが、一部の地方自治体を除き、それは到底無理な状況である。

「安全・安心」と繰り返すが、「安全・安心」できない環境であるから、緊急事態宣言を出しているのではないのか?オリンピック期間中は検査を繰り返すので、感染拡大を防げると言うが、「安心・安全を守る」ために一般国民に対する検査体制の構築はできないのか?オリンピックでは無症状感染者を見つけ出すのに必死になるのに、この1年半、国内の無症状感染者を野放しにしていたのは誰だ。

矛盾だらけのコロナ対策だ。体を張って国民の健康と命を守る覚悟のある政治家はいないのか?


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。