実績作りに躍起:ワクチンよりも“世田谷モデル”の愚

昨日(26日)開かれた福祉保健常任委員会で、新型コロナワクチンの接種状況について報告があった。5月24日現在で、予約を受け付けた人数は14万2000人(含接種済み者)。区内の65歳以上の高齢者は約18万人なので、8割近くの方が申し込んでいる。

国が主導する自衛隊による大規模接種も始まり、初日(24日)は823人の区民が会場で接種した。接種が進むのは良いことだが、区の申し込みをキャンセルしないまま大規模接種を受ける方がいるとのことで、区は注意を促している。キャンセルをすれば、その分のワクチンを他の人に回せる。区ではこれまで56本(336回分)の廃棄があるとのことで、1本も無駄にしないよう、ぜひご協力頂きたい。余剰ワクチンについては、医療従事者、区の職員などに接種することになっている。

区のワクチン接種については、いくつも課題が見えてきた。私のもとにも苦情が寄せられているが、まず、予約しようにも電話がつながらない。ネットの活用を促してもやり方がわからない。やり方はわかるが、表示画面の入力がしにくい等々、、、。区はネットに不慣れな人向けに、28か所のまちづくりセンターで職員が入力を手助けするサービスを始めたが、さらにきめ細やかな対応が必要だ。そうであれば、区民が速やかに接種し終わるよう、人を割いてあらゆる手を尽くしているのかと思いきや、あろうことか、未だにあの“世田谷モデル”に人を割き、実績作りにかまけているのである。

保坂展人世田谷区長 NHKより

この日の委員会では、「社会的検査で陽性となった事例(78件)のウイルス量に関する報告書」と題したレポートも提出された。かつて保坂区長が嬉々として宣伝していたものの詳細である。

結論はというと、

  1.  “世田谷モデル”を実施した11975件で、陽性となった78件のうち、約4割(33件)でウイルス量が多く、強い感染力を有していた。
  2.  1.の33件のうち、約8割(28件)が70代以上の高齢者だった。
  3.  2. の28件のうち、約9割(25件)が施設利用者だった。
  4.  症状があってもCt値が低い(ウイルス量が多い)とは限らない。
  5.  “世田谷モデル”で2名以上が陽性者となった施設のうち、クラスターが発生した施設の約8割にCt値20未満(ウイルス量最多)の陽性者が確認された。

というもので、だから何なんだ、という感じである。区側は「無症状の陽性者をすべて隔離するのではなく、その中でもCt値が低い(ウイルス量が多い)人のみでよくなる」と言うのだが、変異株も出ているし、プール方式で4、5人を一緒くたにして簡便にやっていながら、いちいちそんな選別が出来るのか。それに、高齢者施設だけを云々する時期はとうに過ぎ去っている。そんなことより、まず全区民のワクチン接種を進めれば、自ずと感染者は減る。このレポートを作るのに約50万円を支払ったと言うが、国の依頼で情報提供したはずの区が、費用を負担するというのもおかしな話だ。ここでも無駄な税金が使われた。

区長はすっかり忘れているが、そもそも“世田谷モデル”の目的は、感染拡大の防止を図り、区民の命と健康を守るためだったはずだ。学者の研究材料にするためではない。このことは何度も指摘してきた。低調な“世田谷モデル”を粉飾することはやめて、これに割いている人員、予算をすぐさまワクチン接種のために振り向けるべきである。