菅原一秀衆院議員(前経済産業大臣)が、地元で香典・枕花等として現金を渡したとされる事件で、公職選挙法違反(選挙区内での寄附)の罪で略式起訴される見通しとなったことを受け、菅原氏は、6月1日に自民党を離党した上、議員辞職願を提出し、3日に、衆議院本会議で辞職が認められ、菅原氏は、議員の身分を失った。
来週には略式起訴が行われるとされており、裁判所が罰金の支払を命ずる略式命令を出すと、選挙権・被選挙権(公民権)が原則5年間停止となり、その間、菅原氏は、公職を務めることも、公職選挙に立候補することもできないし、選挙運動を行うことも禁止される。
菅原氏は、自らの「公式ブログ」で、
けじめとして、本日、衆議院議員を辞すべく院に辞職願を提出致しました。
などと述べているが、罰金刑で公民権停止となり国会議員失職となるからこそ、議員辞職願を提出したものであり、自発的に「けじめ」をつけたものでは全くない。
菅原氏に対しては、野党だけではなく、自民党と連立政権を組む公明党や自民党内からも説明を求める声が上がっているが、菅原氏は、マスコミへの発表文とブログで
当局の処分がまだ出ておりませんゆえ、ここですべてをお話することは差し控えさせていただきます。
と述べ、現時点では、事件についての公式の説明を全く行っていない。
ところが、ブログやフェイスブック(Facebook)では、上記の投稿を含め、「一方的な発信」を続けている。
6月に入ってから辞職願を提出したことで、6月末の期末手当が全額支給されることについて野党などから批判されたことを受け、2日夕刻、Facebookで
昨日、議員辞職願を提出しました。明日の本会議で辞職が許可される予定です。尚、月末予定の賞与は当初より、全額返上するつもりでしたので、その手続きに入ります。法律上、返上が叶わなければ、昨年同様、被災地に全額お送りさせていただきます。
と投稿した。
その後、菅原氏は、翌朝までに、上記投稿の「尚、月末予定の賞与は」の前に、「検察の処分が6月とのことで、それまで任期を全うしようとしました。」を付け加えている。
6月1日に辞職願を提出したのは、検察の処分が出るまで任期を全うしようという意図で、期末手当をもらうためではないという「言い訳」がしたいのであろうが、そもそも、地元有権者への寄附の公選法違反の事実を認めていながら、ここまで議員の椅子にとどまったこと自体、本来、許されることではない。
今回、刑事処分に先立って辞職したのは、検察に、自発的に議員辞職したことを情状面で評価してもらい、「公民権停止期間は3年に短縮が相当」との意見を裁判所に提出してもらおうとの魂胆であろう。刑事処分後に議員辞職したのでは、情状面の評価の対象にならないことは言うまでもない。そういう意味では、「6月1日議員辞職願提出」というのは、「期末手当満額支給」で、なおかつ「公民権停止期間短縮」を狙える「絶妙なタイミング」と言える。
そして、菅原氏は、2日深夜、公式ブログにも同様の投稿を行った。
3日夜には、Facebookの投稿で、議員辞職が許可されたことの報告に加えて、
なお、期末手当について総務省と衆議院の議員課に確認したところ、やはり国庫への返納は不可とのことです。全額、被災地へお送りさせていただきます。
と述べている。
しかし、菅原氏の「被災地に送る」というのも、「期末手当返上」として額面どおり受け取ることはできない。
元秘書らの話によると、菅原氏は、秘書から、公設秘書が国から支給されている給与と私設秘書の給与の差額を「上納」させており、その時にも、「被災地への寄附」や「赤い羽根募金に充てる」ことを名目にしていたという。また、常時「香典袋」を持参して活動していた秘書が、地元の支援者の葬儀・通夜の情報を入手し損ねて香典等を出すことができなかった時に、「罰金」と称して秘書から金を巻き上げる際にも、「慈善団体に寄附する」などと言っていた。
今回は、「秘書から」ではなく、「国民から」期末手当分を巻き上げることになるのだが、秘書に対して常時使っている「被災地に送る(寄付する)」という常套文句で批判を逃れようとしているのであろう。
自分の支持者、支援者向けのブログ・Facebookで一方的に発信しているが、その内容は、公の場や記者会見であれば、追及されて、到底維持できなくなるようなことばかりなのである。
菅原氏は、公選法違反を犯した事実を認めていながら、6月1日まで議員の職にとどまって歳費ばかりか期末手当まで全額を受領することになった。一方で、事件の内容や経緯についても、6月1日に辞職願を提出した理由についても、国民への説明責任を全く果たさず、ブログやFacebookで身勝手な「一方的な説明」を続けている。
このような議員が、自民党の要職を務め、経済産業大臣まで務めていたというのは、巨額買収事件で後に逮捕された河井克行議員が法務大臣を務めていたのと同程度に、信じ難いことだ。
菅原氏に対する略式命令では、議員辞職したことを有利に評価することなどあってはならない。原則どおり、5年の公民権停止が当然だ。