社会的な成人は20歳、精神的な成人は36歳

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

20歳を迎えたその日、ほとんどの人が覚えるであろう感覚がある。それが「20歳ってもっとずっと大人だと思っていた」ではないだろうか。

gyro/istock

この感覚に対する解について、オーストラリアの心理学者・Andrew Fuller氏の著書、Your Best Life at Any Ageで解説されている。500,000人ものインタビューを経た同士からの結論は「We all really become adults at age 36.(私達は36歳で本当の大人になる)」である。

ほとんどの人にとって、20歳は精神的な成人ではなかったのだ。なるほど、なかなかしっくり来る妥当な数字と感じる。筆者も36歳くらいでようやく大人になれたと感じた。本稿では精神的な成人の年齢と、人生の絶頂期について取り上げたい。

「精神的な成人」とは何か?

「精神的に大人になる」というのはどういうことなのだろうか。自分なりに考察してみたい。

それは社会的に好ましい振る舞いをしつつ、個人的願望もきちんと叶えるという「バランスの取れた行動」ができるということではないだろうか。会社の人間関係や、プライベートな友達付き合いにおいて、相手に嫌われることを極度に恐れ、ヘコヘコと相手の言うままに動くことではない。また同時に、終始利己的に好き勝手行動することで周囲から嫌われたり、迷惑をかけることでもないのだ。

人間関係における「バランスが取れた行動」とは、気持ち良いやり取りができるような、付き合う相手を慎重に選ぶ一方で、そうでない相手とも当たり障りなく上手な距離感をキープして対応するという具合だろう。自分と合わない相手に対して、むやみに好戦的になったり、極端に距離を取る必要はない。あくまで「no deal(取引なし)」という平和的、戦略的な姿勢で、望まない相手とも角を立てずに関係を持たない対応ができるということだろう。

それが上手にできる入り口こそが、36歳という年齢なのだ。筆者もようやく、それができるようになってきたと感じる。次のパラグラフでは、「人生の絶頂期はいつなのか?」について考えたい。

10代・20代は本当に輝いた年代なのか?

世間的には「10代の内に遊べ。20代は美しく、輝いた年代だ」と言われる。「この年代までが人生の絶頂期で、その後は苦難と忍耐に満ちた人生が待っている。今のうちに楽しんでおきなさい」、人生の先輩からそう言われた事がある人もいるはずだ。

だが、努力を重ねて人生をより良くしたいと考える人にとって、若い時期は決して良いことばかりではないと感じる。義務教育時代は、良い高校、良い大学に進学するために勉強漬け。大学を卒業したら、今度は右も左も分からない状態で仕事に忙殺される。若くて立場が弱ければ、上司からの圧力に苦しむ人もいるだろう。人生80年間の中で俯瞰すれば、10代、20代の若い時期は全体の中で最も輝いた時期ではないと思うのだ。

筆者にとっては、10代・20代というタイミングは、その時は楽しかったが今思えば苦しい時期だった。特に20代半ばからは「今は将来に備えるタイミング」と自分に言い聞かせながら、勉強に仕事に励んだ記憶がある。今という瞬間をすべて未来への種まきのために投じた感覚だった。結果として、30代でそれまでに学んだり経験したことが役立ったという感覚を得た。そういう意味では報われたと言える。

いつでも、何歳でも「今」が人生の絶頂期

人によって異なるものの、最大公約数的な精神的な成人は36歳である。だが、そのタイミングがイコール人生の絶頂期というわけではない。あくまで精神的な成熟度が高まる年齢であり、人生が最も輝く瞬間は常に「今」である。

上述した通り、筆者は10代・20代は種まきの時期を過ごした。これまでの人生を俯瞰すると「若返りたいか?」と問われれば答えはNOだ。なぜなら、今の方が人生は確実に楽しいと感じるからだ。しかし、それは30代を経験した今だから言えることだ。10代の時は「今が一番楽しい」と思っていたし、20代の時は「今頑張れば、未来はもっと良くなる」と夢と希望に胸を熱くしていたので、やはりその時は一番楽しいと感じていた。

結論として、一生懸命生きているという前提に立てば、人生は常に「今」が一番楽しいと感じるものなのである。たまに聞こえてくる、「昔はよかった」と感じるような生き方は、今という時の瞬間を生きていないといえるのではないだろうか。本質的に人生は常に、今が一番楽しくなるようにできている。少なくともこれまでの人生で心からそう感じる。筆者の主張が正しいか?それともキレイゴトの戯言か?これから40代、50代になる中でその答え合わせをしたい。

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