侍ジャパンに超違和感:ペナントはトラが笑い鯉が泣く

尾藤 克之

「侍ジャパン」と聞くといつも違和感を覚えるワタクシです。16日、東京五輪の野球日本代表の内定選手24人が発表されました。やたらと「侍ジャパン」を名乗りたがる日本ですが、江戸時代の身分別の人口の割合は、農民が85%、武士が7%、町人が5%、公家・神官・僧侶が1.5%、その他1.5%と言われています。

NHKより

人口の大半が農民なのですから「農民ジャパン」と書かれることが正解ではないでしょうか。野球という競技を特別視して「侍」を使用しているなら、「自分たちはプロ野球の中で戦うエリート集団」という意味になります。これも少々違うように思います。

◼人気のない野球という競技

野球は国際的に人気のないスポーツです。東京五輪後のパリ大会では、野球は実施されません。東京五輪においても「復活」ではなく追加競技にすぎません。その後、外れることは既定路線でした。欧州諸国での支持を取り付けない限り存続は難しいのです。

簡単に野球の系譜をたどってみましょう。1992年バルセロナ五輪から正式競技となりましたが、プロ参加が決まったのは1998年からです。同年開催されたバンコクアジア競技大会にはオールアマで挑み韓国に敗退、準優勝に終わります。

1999年のシドニー五輪予選では、古田敦也、松坂大輔などを含むプロアマ混成チームで予選を突破するものの、韓国に敗退。2000年シドニー五輪本選も、3位決定戦で韓国に敗れます。2003年アテネ五輪アジア予選は、オールプロの日本代表チームが結成されることになり国内トップクラスの選手を揃えることに成功します。

2004年のアテネ五輪本選は、プロ野球がシーズン中であるため12球団から2名ずつが選抜され、予選は1位通過を果たしたものの、準決勝ではオールアマのオーストラリアに敗れます。2008年の北京オリンピックでは、3位決定戦でもアメリカ合衆国に敗れ、メダル獲得には至りませんでした。

過去の五輪を見ても、芳しい結果を残していません。偏った起用法に問題があったとも言われていますがここまで必死になって参加すべきものなのでしょうか。すでに、ペナントが始まっている状況で、侍ジャパンに主力を参加させる意義がまったく見いだせません。

◼ペナントをぶち壊す侍ジャパン

ここでは、24人の年俸順(球団順)に並べてみました。総年俸1位は楽天ですが、田中は、9試合(59イニング)で2勝4敗、浅村も打率.283、HR4本、打点29と伸び悩んでいます。2人の成績を見る限りペナントの影響は大きくはないと思われます。

2位は巨人です。菅野8試合(49.2イニング)で2勝4敗、坂本も、.307、HR7本、打点16。菅野は規定投球回数未満、坂本も規定打席に達していません。中川は、ホールド16を挙げセ4位の好成績を残しています。

広島に至っては、5選手と全球団でももっとも多い選出となりました。鈴木.294(セ7位)、HR8本、打点19、菊池にいたっては、打率.313とセ首位打者。森下の防御率2.35はセ4位、栗林のセーブ12は、セ2位の好成績です。

ソフトバンクの柳田は本調子でないとはいえ球界最高のスラッガーです。甲斐も正捕手として12球団最少失点の投手陣をリードしました。栗原の打率.294はパ7位の好成績。ヤクルト山田のHR17本はセ3位、村上のHR20本は両リーグトップです。

現在、ペナント最下位の広島は、主力の5人が抜けてしまうのでもっとも厳しい戦いが余儀なくされます。一方、笑いが止まらないのが阪神です。今シーズンの青柳、岩崎の活躍は素晴らしいものの、一線級の選手とはいえません。五輪が無事に開催されれば、首位固めに拍車がかかりそうです。

1位.楽天14億(田中9億、浅村5億)
2位.巨人13億7500(菅野8億、坂本5億、中川7500)
3位.広島8億4900(鈴木3億1000、菊池3億、會澤1億8000、森下4300、栗林1600)
4位.ソフ8億1900(柳田6億1000、甲斐1億6500、栗原4400)
5位.ヤク6億(山田5億、村上1億)
6位.オリ4億3000(吉田2億8000、山本1億5000)
7位.中日3億(大野3億)
8位.ベイ2億8000(山崎2億8000)
9位.ハム1億9500(近藤1億9500)
10位.阪神1億4500(岩崎9500、青柳5000)
11位.西武1億9200(源田1億5000、平良4200)
12位.ロッテ(選出されず)

◼本来は誰を出場させるべきか

本来はペナントの行方に影響を及ぼす選手ではなく、活躍が期待されたもののまだ陽の目を見ていない選手を中心に選考すべきではないでしょうか。ここ数年、ドラフト1位で入団しながら活躍できていない選手がいるではありませんか。

清宮(日ハム)、吉田輝(ハム)、安楽(楽天)、オコエ瑠偉(楽天)、藤原(ロッテ)、太田(オリ)、馬場(阪神)、高橋(巨人)、中村(広島)、根尾(中日)、寺島(ヤク)などが挙げられるでしょう。さらに、ここに期待の新人、奥川(ヤク)、佐々木(ロッテ)などが加わってもいいでしょう。

五輪にしろ、WBCにしろ世界的にみれば野球は不人気。コロナ禍で観客動員も期待できませんから、もっと現実的な路線で考えるべきでしょう。さらに、周知のとおり収益の大半は日本にはいりません。わずかな、ギャランティーがはいるかも知れませんが。

今回で見納めになりそうな「侍ジャパン」ですが、アマチュア野球と連携するなどして、根本的に「世界戦略」を見直したほうがいいでしょう。