ファクスの利用を原則廃止し、6月30日までに電子メールに切り替えるように内閣官房行政改革推進本部事務局が各府省に通知したと、多くのメディアが報じている。
テレワークの阻害要因の一つがファックスであると、行政改革担当の河野太郎大臣はかねてより指摘してきた。これを伝えたITmediaの記事には、河野大臣が各国大使から『我が国では博物館にあるファクシミリというものが日本では現役で毎日使われている』とやゆされたことがある、という笑い話も書かれていた。
確かにファックスは社会から消えつつある。総務省・通信利用動向調査(2019年版)によれば、ファックスを保有する世帯の割合は33.1%だそうで、2009年の57.1%からは大幅に低下している。特に、世帯主が20・30歳代の世帯にはファックスはほとんどない。
通信利用動向調査は世帯と企業に分けて実施されているが、2009年時点でさえも、企業のファックス保有率は調査されていなかった。政府がファックスを原則廃止するのも、時代の流れを反映したものといえよう。
ところが、日本弁護士連合会が先日公表した『2021年度会務執行方針』には、会長選挙でのファックスの利用を認めるという記述があり驚いた。「会長選挙規程の改正」という項目に、次のように書かれていたのだ。
立候補者が、容易かつ効果的な方法で自らの政策を多くの会員に対してより確実に訴えることができるよう、選挙公報の早期発行のための立候補期間の短縮、一定枚数に上限を設けた上でファクシミリによる選挙運動を可能にするようにします。
今さらどうしたのだろうか。
「弁護士ドットコム」によると、2015年から候補者によるサイトの開設やメールの送信が認められているが、文書による選挙運動は郵便はがきの発送とポスター掲示に限定されていたので、ファックスを追加することにしたそうだ。
しかし、どうにも納得できない。弁護士はメールよりもファックスのほうが「多くの会員に対してより確実に訴え」られるとしか読み取れない。今年度の執行方針には、法務省で検討が始まる刑事手続のIT化に積極的に取り組むとあるのだが、これとファックスによる選挙活動は矛盾しているのではないだろうか。