天皇陛下も五輪開催によるコロナ感染拡大を憂慮されている

宮内庁の西村泰彦長官は、6月24日の定例記者会見で、天皇陛下が「オリンピックの開催が感染拡大につながらないか懸念されていると拝察している」と述べた。そのうえで、西村長官は「組織委員会をはじめ、関係機関が連携して感染防止に万全を期して頂きたい」と述べたという。天皇陛下は東京オリンピック・パラリンピックの名誉総裁を務められている。その陛下が五輪開催によって、コロナが更に感染を広げないか憂慮されているのだ。

宮内庁の西村長官 NHKより

政府の水際対策が不十分な現状を見れば、陛下の憂慮は当然だ。「安心安全」を連呼してきた菅政権は、恐れ慎まなければならない。おそらく、陛下は日本国内の感染拡大のみならず、五輪によって、世界にコロナが拡散していかないか、それも憂慮されておられるはずだ。「五輪を開催するのは当然だ」「五輪開催を支持します」ー特に保守派の言論人からこの言葉が聞こえてくるが、そうした人々は、昨年は「中国からの入国を止めよ」、そして今年は「日本政府の水際対策は不十分だ!けしからん」と主張していたはずだ(私もそれに大いに同意するのであるが)。

しかし、そうであるならば、数万人が世界中から日本にやってくる五輪開催に反対するのが、筋道、道理ではなかろうか。しかし、そうした人々からは五輪に関しては「大丈夫、大丈夫」という楽観論しか聞こえてこないように思う。それほど「大丈夫」ならば、これまで、海外からの入国を止めろと主張する必要もないし、水際対策が不十分と政府に怒る必要もなかったのではないか。

さて、冒頭の西村長官の発言について、加藤勝信(官房長官)は「宮内庁長官のご自身の考え方を述べられたと承知をしている。詳細については宮内庁にお聞きいただきたい」と述べたという。予想通りのコメントである。西村長官の発言は、天皇陛下のお考えを表したものではなく、西村長官個人の考えだと政府は主張したいのだ。

しかし、西村長官は「天皇陛下が新型コロナウイルスの感染状況を大変、心配されている」と話しているのだ。そうであるならば、陛下が五輪の開催が感染拡大につながらないか憂慮されるのは当然であるし、冒頭の西村長官の発言内容は、陛下の御心と考えてほぼ間違いないのではないか。