「脱炭素バブル」が必ず崩壊する理由

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

6月18日に発表された菅政権の「骨太の方針」では、「成長を生み出す4つの原動力」の筆頭「グリーン社会の実現」の中で、「成長に資するカーボンプライシングの活用」があげられている。これはわかりやすくいうと炭素税だが、財界が反対しているため、具体的な数字が出せない。

21日に開かれた環境省の有識者会議では「炭素1トン当たり1万円程度の炭素税をかけても成長を阻害しない」という調査結果が発表された。環境省としては、この辺りを落とし所と考えているのだろうが、これで2050年にCO2排出ゼロにすることはできない。カーボンニュートラルというのは、そんな生やさしい目標ではないのだ。

スイス国民は「2050年ネットゼロ」を否定した

炭素税1万円/トンというのはわかりにくいが、日本では1000円で税収がおおむね1.3兆円なので、これは税収でいうと13兆円になる。消費税6%分だが、この程度ではCO2排出量はゼロにはならない。

本当に「ネットゼロ」を実現するには、どれぐらい炭素税が必要かを計算したのが、IEA(国際エネルギー機関)が今年(2021年)5月に発表したロードマップである。

ここではネットゼロを実現するには、2050年までに250ドル/トンの炭素税が必要だと計算している。これは日本でいうと2万7500円/トン、消費税17%分である。

この報告書は、できるかできないかを考えないでネットゼロを実現するには何をしないといけないかを逆算するバックキャスティングという手法で書かれているが、普通の国民は、地球の平均気温のために生活しているわけではない。

今年6月13日に行われたスイスの国民投票では、2050年ゼロを実現するための「二酸化炭素法」が51.6%の国民が反対して否決された。この法案では、210スイスフラン(約2万5000円)/トンの炭素税がかかることになっていた。

ガソリン税は(既存の税と合計して)1リットル当たり1スイスフラン以上、税率は100%以上になる。地球環境問題に熱心なスイス人も、さすがに立ち止まったのだ。

続きはJBpressで