今週のつぶやき:株式市場のV字回復、東芝劇場ほか

香港の民主派新聞、通称「リンゴ日報」を政府の弾圧で休刊に追い込んだことは世界で最も影響力ある国家の一つの行為としてあるまじきことであります。香港人にとって語りつくせないものがあるでしょう。自由に主義主張を語れない制約が現代社会で強要されることを宿命とするのか、時代のいたずらとするのでしょうか?本件は共産党の志位委員長ですら「中国の蛮行に強く抗議する」と述べています。最近、中国側のボイスは趙立堅報道官の冷酷で激しい言葉を並べ薄笑いを浮かべる顔からしか聞こえてきません。政府広報すら言動統制を敷いているのか、ともいえるこの社会は異質異様といわずしてなんと申し上げたらよいのでしょうか?

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では今週のつぶやきをお送りします。

V字回復…
先週の株式市場の惨状は何だったのか、と思うほどV字回復した株式市場ですが、個別銘柄でみると非常に儲けにくくなっています。この状態は既に数カ月前からの現象でいわゆる「指数相場」になりナスダックやS&Pが史上最高値を付けてもアップルやアマゾンが高値をつけるわけではなく、投資家は複雑な心境でしょう。私はこの表層の指数だけの中抜き相場は夏の間、続くとみています。

問題は9月以降でしょう。予想するにはエレメントが多すぎるのですがこの適温相場がずっと続くとは思っていません。最大のファクターはコロナの行方。この制御に失敗すれば株価にはプラスとマイナスの作用がかかります。プラスは利上げの時期が遠のくという解釈。マイナスは個別企業の決算見込みの下方修正です。日本の場合はオリンピックの行方で、メダルの数ではなく、コロナとどう向き合い、どういう結果をもたらすか、これにかかります。中国経済も表向きと裏側のギャップが大きそうです。

確実に言えるのはコロナで1年半以上、人々が経験したことのない制約とストレスな社会の中で正常化に進んだとしてもかつてのマインドややり方が簡単に回復できるとは思えない点です。ポストコロナをテーマにした話題は増えてきていますが、人間の行動は株価のようなV字回復とならず、機敏ではなく、判断に苦しみ、踏み込みにくくなったことは間違いないでしょう。

東芝劇場
東芝ほどネタが多い会社もないと思います。これほど長期間に渡り、高い注目を集めた点において東芝劇場は壮大な物語となりそうです。昨日の株主総会で取締役会議長の永山氏他が株主否決され、司令塔を失いました。綱山CEOが暫定で議長を務めるのですが、綱山氏はそもそも社長もCEOも暫定であって更に議長まで暫定となり、一時的にせよ完全にリーダー不在の状態に陥ります。

これを喪明けと見るのか、終わりの始まりとみるのか、様々な意見が飛び交います。私は何度も申し上げていますが、半導体事業の売却という判断ミス、その売却プロセスの問題と株式上場維持のために物言う株主を世界中から集め、ハチの巣を突っついたような会社にしたのは他でもない綱川氏です。その綱川氏を傀儡化させ、猛獣たちがおいしいところの取り合いを演じ、「骨皮筋右衛門」化となるのでしょうか?

この会社がよくなるかと問われれば厳しいとみています。金の力で株主がガバナンスそのものを自由に操ろうと画策し、骨の髄までしゃぶりつくすでしょう。かわいそうなのは社員です。良い社風なのですが、おっとりしすぎたかもしれません。誰がトップに就くのか、これが当面の興味ですが、日本人ではない可能性は大いにあると思います。日本の経営者層はもう人材が払底しつつあります。

夫婦別姓
最高裁の判断で夫婦別姓は認められませんでした。国民意識が明白になったら裁判の判断を変えるという事後処理的で責任回避型の判決を現代社会における最高裁判所の考え方として受け入れるのか、私には疑問があります。今回の判断をどうとるか、専門家の視点はいろいろあると思いますが、2015年判断から本件を巡る社会情勢が変わったのか、に関して最高裁の基本的思想は「判断を覆すほどの状況になっていない」であります。

選択的夫婦別姓容認派は4割以上に増えており、確実な認知度の向上と若い人たちの変化が見て取れます。また、離婚件数は年間約20万件とピークの29万件(2002年)からは減少していますが、それ以上に結婚を面倒なプロセスと考える若者が海外のみならず日本でも確実に増えており、パートナーシップという選択を取る背景が増えているのは結婚という儀式と法的縛りの重さがそれを敬遠させているのではないでしょうか?

一定年齢の方に言わせれば「結婚は社会的責任を負うことだ」と極めて重い表現をしますが、今の人たちはそんなふうにはとらえないでしょう。本人同士の問題であり、付き合い方をどの深度まで追求するか、恋愛関係の維持か、パートナーシップか、結婚かという選択肢が出来ているともいえます。子供を作るには結婚しかないという考えも重苦しく、非嫡出子の扱いについても日本は世界の流れからは異質になりつつあります。世界の流れに日本が沿わなくてはいけないわけではないですが、結婚するのは今の高齢者ではなく、20代30代の人たちであり、その世代の社会的変化はもっとくみ取るべきではないでしょうか?

後記
6月の終わりは夏休みに入る前に様々な予定を突っ込むからか、超繁忙になります。私の予定もこのところミーティングが週に20本程度、今日の最終ミーティングは日本時間に合わせていることもあり、夜中の3時からです。夜の予定も10連荘といった具合で7月に入ったらぐったりしそうです。一方、当地はコロナをうまくコントロールしており、人々は完全に休みモードで表情にも笑顔が戻っています。羨ましい。

では今日はこのぐらいで。。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年6月26日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。