赤木俊夫氏を自殺に追い込んだのは誰か(アーカイブ記事)

池田 信夫

赤木俊夫氏の自殺にからむ訴訟で、国が文書改竄の責任を認めて裁判が終結しました。この事件のきっかけをつくったのは朝日新聞であり、立憲民主党の2人の議員が財務省にどなりこんだ翌日に、赤木氏は自殺しました。2021年6月26日の記事を再掲します。

森友事件で自殺した元近畿財務局職員、赤木俊夫氏の遺した「赤木ファイル」が開示され、これについて安倍前首相がFacebookでコメントしている。財務省が提出した関連文書は580ページもあるが、赤木氏が2017年3月に書いた「備忘記録 本省の対応(調書等修正指示)」は1ページだけである。

・本省において、議員説明(提出)用に、決裁文書をチェックし、調書の内容について修正するとの連絡受。本省の問題意識は、調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれのある部分は削除するとの考え。現場として厚遇した事実もないし、検査院等にも原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見(相当程度の意思表示し修正に抵抗)した。

◎本省の修正指示を受け、3月7日午前、速やかに部長に報告。本件事案は本省と協議し当初の定期借地契約を締結している過程等が調書から削除されることは今後の検査院への説明等に支障が生じるため、現場の問題認識として既に決裁済の調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議した。

→3月9日、近畿財務局管財部長から局長に報告。今回の対応(修正等)は、本省理財局が全責任を負う。近畿財務局長の責任で対応するとの発言(部長と本省幹部間で話をしたと思われる)。当局は一切修正作業は行わず本省が修正作業を行うとの説明受(納得できず)。

◎本省で、議員からの資料要求に対する佐川理財局長への説明過程や、同局長からの指示等の詳細が当局に還元(説明なし)されず、詳細が不明確なまま、本省審理室(担当補佐)からその都度メールで投げ込まれてくるのが実態。本件の備忘として、修正等の作業過程を下記のとおり記録しておく。

朝日新聞が火をつけ、野党が炎上させた

この後に一連の経緯を時系列で記したメモが続くが、赤木氏の事実認識を記した「備忘記録」はこれが全部である。後半の佐川局長が改竄を命じたところばかり報道されているが、安倍氏も指摘するように、最初に「現場として厚遇した事実もない」と書いている点が重要だ。

赤木氏が本省の指示に抵抗したのは、問題の国有地を森友学園に特別に低価格で払い下げる「厚遇」はしなかったからだ。その後の国会質問でも、売却価格が不当に減額されたという結論は出ず、刑事事件にもならなかった。もちろん安倍首相とも無関係だった。

公文書偽造は犯罪であり、それを命じた佐川元局長の責任は重いが、最初に森友事件に火をつけ、あたかも安倍氏が指示して減額させたかのような報道を続けたのは朝日新聞である。赤木氏は、それが誤報であることを当時から知っていたのだ。

では佐川氏は、なぜ問題のない記述を削除させたのか。それは安倍昭恵さんの名前を抹消するためだった。これは首相の「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員もやめる」という軽率な答弁(2017年2月17日)のあと、佐川氏が「交渉記録はなく、面会などの記録も残っていない」と虚偽答弁をしたのが原因だった。

野党は1年以上にわたって国会で森友問題を追及し、2018年3月6日には立憲民主党の杉尾秀哉議員と小西洋之議員が、財務省にどなりこんで「森友の決裁文書を出せ」と要求した。

赤木氏が自殺したのは、この翌日(3月7日)である。理財局から決裁文書を出せという命令が出たため、それに抵抗して自殺したものと思われる。彼を自殺に追い込んだ直接の圧力は本省の理不尽な命令だろうが、野党の執拗な追及が引き金になった疑いが強い。

事実無根の「疑惑」を1年以上にわたって騒ぎ続けた責任に口をぬぐって、財務省の責任ばかり追及する野党とマスコミに対して、政府はきちんと反論すべきだ。

【追記】このどなりこみ事件についてのDappiのツイートを杉尾・小西議員が名誉毀損として提訴した。「近財職員は…吊し上げた翌日に自殺」と書いた点はDappiの事実誤認(どなりこんだのは本省)だが、それ以外の事実関係は正しい。そもそもこのツイートは門田隆将氏の記事の引用なのだから、門田氏も提訴しないとおかしい。