「東京五輪開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されていると拝察している」という宮内庁長官の発言は、政治的に争いがある問題について、しかも、選挙の期間中にいかなる形でも論外であって、日本の憲政における汚点というべき暴挙である。
ところで、この会見でもうひとつ気になるやりとりがあった。
(質問)ワクチン接種、陛下は?
(長官)この場ではご紹介できるような事態になっていません。
つまり、陛下はまだワクチンを打っておられないと云うことだろう。
それについて「週刊女性」は関係者の「両陛下はコロナ禍に苦しむ国民のことを第一に考えられてきました。ワクチンを接種される予定は公表されておらず“国民に行きわたるまでは、打たない”との意思が感じられます」という意見を紹介している。
しかし、海外のからの賓客に多く接する陛下がワクチンを打たれていないとすれば、陛下自身にとって危険なことであるとともに、もし陛下が感染された場合に、世界各国の指導者や王族などを危険にさらすそれこそ危険な状態だと思う。
うっかりすると、世界の平和と安全を危機にさらす脅威にすらなりかねないもので、思い違いも甚だしい。
「国民に行きわたるまで打たない」という精神論は、ひとつの矜恃であり、個人的美学かもしれないが、世界の首脳や王族にとっては迷惑この上ない。
もしものことがあったら、日本と皇室の国際的評価は地に堕ちる。もし、これが本当なら、一刻も早く接種していただくように菅首相は諫言すべきである。こんな分かりきったことを諫言できない宮内庁長官も首相も無責任だ。