緊急事態宣言再発令なら東京五輪を中止せよ

政府は、新型コロナウイルスの感染状況が拡大する東京に対して、緊急事態宣言を再び発出する方針を固めたとの報道があった。宣言の期限は8月22日までだという。

Yusuke Ide/iStock

私はこれまで、日本においては、緊急事態宣言を出す必要は、殆どないとアゴラで主張してきた。しかし、それでも東京五輪は中止すべきと訴えてきた。なぜか。特に、世界の発展途上国にもコロナが拡散される恐れがあるからだ。そうなる可能性・危険性があるならば、中止したほうが、世界の平穏のために良いと考えているのだ。それが「人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励する」オリンピック憲章に合致するのではないか。

さて、日本政府は「病床のひっ迫」を宣言を出す理由としてよく挙げているが、それは、コロナ発生から1年以上も時がありながら、準備をしてこなかった政府の怠慢を示す以外の何物でもない。準備不足は、ワクチン接種の準備やその確保についても言えることである(イギリスなどは、コロナ発生直後からワクチンのことを考えて動いていた)。日本政府はと言えば、既にマスクが広く流通しているにもかかわらず「アベノマスク」が配布されたり、GOTOキャンペーンに狂奔していただけではないのか。

そして、2021年に入ると、緊急事態宣言を出したり、引っ込めたりの繰り返し。日本経済のこと、苦境に立つ商店のことを考えるといい加減にしろと言いたくなる。しかも、緊急宣言を発令中であっても、「平和」の祭典・「安全安心」の東京五輪は開催するというのだから呆れる。

緊急宣言発令中は「平和」な状態なのか?危険な状態だから緊急事態ではないか?その危険な状態の時に、五輪を開催するのはなぜか?危険な状態の日本に世界中から数万の五輪関係者を集めてどうするのか?第一、緊急宣言を出したり、引っ込めたりしたら、効果は薄れるし、もう誰も政府の言うことなど聞かなくなる。五輪期間中に、緊急宣言を発令するなら、五輪は中止するのが穏当な判断なのではないのか?

「憲法改正して、緊急事態には、政府にもっと強い権限を」と主張する人もいるが、近年の日本政府の対応を見ていると、とても怖くてそんな権限を与えられないと思うのは、私だけではあるまい。憲法改正を主張してきた私でさえも、そう思わざるを得ないほど、政府・政治家の質は劣化しているように思う。