海の反対側から見る日本がこれほどもがくのを見た記憶はあまりありません。震災の際にも復興と希望ある未来に向けて日本中が輪になっていました。いまはバラバラ、しかも何をやっても裏目に出る、そんな感じにすら見えます。
五輪開催を2週間後に控えた今、五輪開催都市の東京都は4度目の緊急事態宣言で予定期間は8月22日までと1カ月以上に渡り、その間再び、飲食店での酒類の提供が見送られます。また、五輪も多くの会場で無観客になります。「チケットを持っている」と言っていた人たちも返金こそしてくれるものの「一時の夢」で終わってしまいました。
子供たちに五輪を見せて、将来の夢を、という美談も薄れてしまったし、スポンサー企業はとばっちり、旅行会社はチケットを売ったり返金したりで利益なき繁忙状態。かすかな可能性を期待してホテルの予約をキャンセルせずに待ち続けた多くの方々ももうダメだ、となり、ホテル業界にも閑古鳥が鳴くのでしょうか?
ネガティブの背景には二つの「事件」もありました。一つが都議選、もう一つが熱海の土石流事故です。都議選の自民への支持が明白に伸び悩んだことは現政権の秋の通信簿に向けた中間試験で及第できなかったようなものです。この結果が示したのは自民党は今のままでは秋の選挙は勝てないということです。
もう一つ、熱海の土石流事故は部分的には人災のようにも見えますが、どういう原因にしろ、コロナニュース一辺倒で疲れていたマスコミが一斉に熱海事故に報道の矛先を向け、メディアが悲しい事故として連日報道し続けるため、世の中のトーンが非常に暗くなってしまったのです。もちろん、行方不明者がまだたくさんいるので暗いのは当たり前なのでしょうけれど行方不明者の捜索は東日本大震災を連想させ、とてもじゃないですが、五輪の盛り上がりどころではなくなってしまったのです。
まだネガティブな話はあります。株価です。北米市場が最高値を付ける中、日本市場が完全に世の中の流れから見放されたような状態になっています。「独歩安」なんていう言葉は私も多分2012年以来、使っていなかったと思いますが、そんな雰囲気にあります。今日は北米も大幅安ですので金曜日の東京市場は目も当てられないことになるかもしれません。
なぜ、日本の株価が安いのか、様々な分析はできるのですが、大局的にみて政治のリーダーシップ欠如、これに尽きると思います。外国人投資家がこぞって日本株を投資対象から落とし始めており、アジア向けファンドの振り向け先が他の国の市場に向かっているように見えます。未だに金利は低く、地球儀を回遊するフローティングマネーはあるのに日本に来ないのは企業業績、消費、GDPの低迷などいろいろ考えれらますが、最終的には政権の指導力に行きついてしまいます。
ここにきて二階幹事長が動き始めた様子です。菅総理では乗り切れないにしても誰が代わりをできるか、と言えば国民が納得できる方は極めて限られるでしょう。確かにコロナ対策は難題でした。しかし、ほとんどの先進国では何らかの長期的ビジョンの中、比較的安定感をもって経済は回復しつつあります。日本だけがなぜこれほど足踏みをするのか、非常に残念に思っています。
私は五輪に向けて改善の方向になると楽観視していました。ただ、当初から五輪は「観客を入れるのは無理、無観客で」と意見させて頂きました。ところが「入れる、入れない」で混乱を招き、結局、政権に振り回された感はあります。また、ここにきてコロナ感染者が増えてきているのもまた残念なことです。一度でも接種した人は高齢者こそ72%ですが、全国民ベースだと27%に過ぎないのです。一部の国民の気の緩みもあります。また政府も制限を緩めるのが早かったと思います。せめて全国民ベースで一度の接種が4-5割ぐらいまでは緩めるのを待つべきだったのではないでしょうか?
政権は経済的インパクトがあることを懸念したわけですが、欧米は強力なロックダウンを経験しつつも経済がそこまで疲弊した感じはありません。日本はハーフマラソンで済むところをフルマラソンしているような違いでしょうか?
こうなるとニッポン頑張れ、と応援するしかありません。人々は不信感を募り、SNSは荒れ、憤懣やるかたないのはよくわかります。自由を謳歌した日本だからこそ、政府や当局に規制されるのはおかしい、と叫びたいのはわかります。しかし、それではあまりにも統制が取れません。統制なんていえばまた戦争時代を思い出すと猛反発する声が出るのでしょう。しかし、リハビリ中に無理を重ねていてはよくなるものもよくならないのです。私だって仲間にもう1年半、会っていません。でも我慢は必要なのです。どうか、この難局、乗り越えてもらえればと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月9日の記事より転載させていただきました。