落選した立候補者の再就職をサポートする必要あり --- 松橋 倫久

市町村議会では、定員に対する立候補者数が2倍に満たない自治体も多い。平均倍率は1.21倍だという。町村議会に至っては、定員が割れてしまうような自治体も見られるようになってきている。なぜ、政治家という職業に魅力を感じないのか?

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僕が考えるところでは、政治家という職業がいったん政治の道に入ってしまうと、一般の職業に就くことが難しいということがあると思う。以前にテレビで見たのだが、元都議の方が転職活動をしていたのだけれど、どこの職場に面接に行っても、「都議をされたような偉い人は、雇えない」と断られていて大変そうだった。

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政治の道にいったん踏み込んでしまうと、選挙で当選し続けるしかない。そして、選挙に落ちればたちまち生活にも困ってしまう現状では、おそらくひどくリスクの高い職業と映っているだろう。

根本的な解決は、地方議員の経験のあるような人材が民間の企業で働きたいと希望したとき、サポートできるような仕組みが作れれば良いと思う。既存のハローワークでそのような働きができるかわからないが、検討してみても良いのではないか。

政治家がキツいところは、いったん出馬したのなら当選しなければ退路がないし、また一回当選しても何度も当選し続けなければ、働くところもないのである。政治家に権力があり、報酬も高いとは言え、ここまで過酷な条件でチャレンジしたいと思うだろうか。

もう一つとして、選挙に出る側でも対策を打つことはできる。たとえば地方議員では行政書士のような士業の事務所を開いている人や、建設会社の社長をやっている人などもいる。自身の政治活動を安定化させるためにも、やはり資格を取ったり事業を営んだりすることは大事ではないか。

副業というと、日本ではあまりいい顔をされない。少しずつ、副業を認める企業も増えてきていると思うが、まだまだである。だが、職業として政治家を目指すのであれば、政治の他に生業があった方が良いと思う。地方自治法第92条で、兼職の禁止、兼業の禁止について定められているが、それに抵触しなければ問題ないはずだ。

政治家専業の人と比較すると、政治に集中できていないという意見もあるかもしれない。しかし、逆に副業の周辺から政治的な課題が見いだされることだってあると思う。政治活動に無駄にならないばかりか、生活も安定させることができる。

私の意見としては、落選議員への再就職のサポートを制度として国や自治体が用意するべきと思うが、それは僕が政治という職業に個人的に関心を寄せているからそう思うのだろうか。一般の有権者の方は、どう思っているだろうか。

政治を志す人は、落選したら路頭に迷っても仕方がないのだろうか。このようなことを言うのは、僕に覚悟が足りないからだろうか。現状として落選議員の就職活動に公的な支援が得られない以上、自分で転ばぬ先の杖を用意しておくしかないのではないか。

落選した方、引退した方への就労支援が必要だと思う反面、民間企業が政治経験者・政治を志した人を受け入れる土壌を育成していくことも、今後大事になってくると思う。いくら支援しても、採用する側のマインドが変わらなければ、仕事を得ることは難しい。

民間企業がどういう人材を雇おうが、もちろんその会社の自由ではあると思うのだけど、政治という職業をもう少し気軽にトライできる社会の方が、今よりも良い社会になるような気がします。

松橋 倫久
1978年青森県生まれ。中央大学、東北大学を経て2002年青森県庁に奉職。在職中弘前大学大学院修了。統合失調症を患い2016年同庁退職。現在は求職活動の傍ら、自治体行政のあるべき姿を研究中。