マカフィ創業者、米国への送還通知された日に自殺の衝撃

米国に送還されることが通知された日の午後マカフィ氏は独房で首を吊って自殺した

一般にはPCのセキュリティーソフトとして「マカフィ」という名前はよく知られている。それを製品化させた企業の創業者ジョン・マカフィ(John McAfee)氏(75)が6月23日、バルセロナ県サン・エステベ・セスリビレス町にある刑務所の独房の中で首を吊って自殺したことは、意外だった。

自殺しようとする意図がみられる受刑者の場合は、24時間監視体制が敷かれる。マカフィ氏の場合はその意図が観察されなかったということで、もう一人の受刑者と独房を共有していた。マカフィ氏は午後4時に独房に戻りたいということで刑務官の許可を得て独房に戻った。受刑者は午後の務めがない場合は独房に戻ることができる。彼が独房に戻った時はもう一人の受刑者はそこにはいなかった。

午後6時が過ぎて刑務官が独房を回り、受刑者を再び独房から出すことになっていた。その時、マカフィ氏が靴の紐で首を吊っていたのを見つけたというわけだ。

John McAfee氏 Wikipediaより

刑務官の方ではまさか彼が自殺するとは想像しなかったという。というのも、彼は刑務所での生活に順応し友達もできて食事の内容にも満足していることを表明していたからだ。

彼の死因の解明のために遺体の解剖が行われたが、自殺とみなされた。というのも彼の遺体を見る限り犯罪があった兆候はまったく見当たらなかったということからである。(「エル・パイス」6月24日付から引用)。

しかし、気になるのは、彼が自殺した日というのは、その午前中に米国に送還されることが伝えられたという点である。また、彼が自殺した時には、独房を共有していた受刑者がそこにいなかったということだ。

マカフィ氏の弁護士ハビエル・ビリャルバ氏は彼が自殺したことについてロイター通信に長期間彼を拘留していたことが主因だとし、長く拘留させていた現在の司法システムを批判した。

彼を拘束したのは昨年10月4日のこと。米国から脱税の罪でインターポールからの逮捕命令を受けていたスペインの国家警察が彼を拘束したもの。それは丁度彼がバルセロナのプラッツ空港からトルコのイスタンブールに向かおうとしていた時だった。マカフィ氏の脱税額は、2014年から2018年のおよそ2000万ドルとされている。(電子紙「エル・コンフェデンシアル」2020年10月8日付から引用)。

米国に送還されれば終身刑が言い渡される。それに健康上もデリケートな状態にあると告白していた。しかし、スペインの法廷では彼は米国で最高5年の禁固刑となり、終身刑になることはないと否定した。また、彼の身体がデリケートであることも記録されていないとした。結局、彼の送還を拒否できる理由がスペインの法廷ではみつからなかったということである。(前述「エル・パイス」から引用)。

そもそもマカフィ氏がスペインを訪問するのが明らかになったのは、彼がカタルーニャのタラゴナ県にあるリゾート地カンブリルスでコロナ禍によるロックダウンさせられていることをSNSで明らかにしたことに始まる。しかし、マカフィ氏がカンブリルスを訪問するようになったのは2018年頃からと見られている。そこにはダウラダ・パークと呼ばれているホテルが存在し、その地下でクリプトコインの採掘が実施されていて、それにマカフィ氏が関係していたと思われている。

このホテルはロシア人によって買収されて改装が行われていたが、当初警察の検査を拒否していた。照明にレーザー光線を設置しよとしたりしたのでそれは合法化されていないとして警察が検査の必要性を要求。警察が中に入って検査している段階で地下にたくさんのコンピュータなどが設置されているのを発見。それはクリプトコインの採掘の活動のためだった。それを警察は停止することはできないが、それに伴う電力の消費量が規定の枠内に収まるものかを警察では検査する必要があるして査察に入った。(電子紙「ディアリ・デ・タラゴナ」2018年1月5日付から引用)。

2017年頃からこのホテルは営業をしているとは思われない様子であったが、車が常に駐車されてているのが観察されていたという。 前述電子紙「エル・コンフェデンシアル」が所有者と接触しよと試みたが現在までその回答はないそうだ。

マカフィ氏は自社をインテル社に2010年に80億ドルに少し満たない額で売却した。けれども、彼の投資は結果を生まず、個人資産は400万ドルまで減少していたという。

そういった中で、短期間に儲ける手段としてスペインの避暑地でのクリプトコインの採掘に手を出したようである。最終的にそれが拘束につながったというわけである。

マカフィ氏の家族は自殺したことに不審を抱いており、彼の前述した弁護士はこの件を担当している判事の許可を得て彼らが信頼できる解剖医に2回目の解剖検査を依頼する意向である。(電子紙「プブリコ」6月25日付から引用)。

彼は数か月前に、「もし私が自殺した場合は、それは米国政府の仕業だ」とツイートしていた。また彼は強打されて暗殺されたことを仄めかすかのように腕に「Whacked」と書かれた入れ墨をした上にドルの印をそれに加えていた。彼のツイートには100万人以上のフォロワーがいる。(電子紙「パナム・ポスト」6月25日付から引用)。

その後、7月14日付の「エル・パイス」が、彼の遺体を解剖した際に彼のポケットから遺書のような書き物が見つかったと報じた。

そこには書いた上から訂正するかのように線を引いた箇所がたくさん見られるが、Instead of fully living it, I want to control my future, which does not existと記されているのが目立った。

マカフィ氏の夫人は今も自殺説を否定している。見つかったこの書き物についても、ポケットの中にあったというのであれば、それを折り込んだ跡がその用紙には見えないと述べている。また字体も彼の字体を真似たような書き方だと表明している。

現状で他殺説が有力となる可能性は、非常に薄い。しかし、マカフィ氏の名前を拝借したセキュリティーシステムが存続する限り、彼のことは忘れられることはないだろう。