日本人の感染対策を嘲笑う2つの統計的事実とは?

森田 洋之

wolfhound911/iStock

いま日本では、一部地域で緊急事態宣言が発令され、感染対策の徹底が再度呼びかけられている。

しかしその一方で、我々が想定していた「感染対策の効果」が限定的だった?ことを示すデータがあることをご存知だろうか。

今回はそのうちの2つをご紹介したい。

まず1つ目。

日本の感染トレンドは、世界のトレンドとほぼ同じ。

実はそうなのだ。以下図表が新規感染者数の推移。

図表1 新規感染者の推移 出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学より

上が世界で下が日本。ほぼ同じ傾向でシンクロしているのが分かると思う。

これは死者数の推移でもほぼ同じだ。

図表2 死者数の推移 出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学より

とても偶然とは思えないくらいに世界と日本のコロナ感染傾向はシンクロしている。世界の国々が日本と同じタイミングで感染対策をしていたのだろうか? まさかそんなことはない。

このグラフから見えてくることは、

「感染の推移の鍵を握っているのは感染対策など人間側の要因にもまして、ウイルスや環境側の要因」

ということなのではないだろうか。こんなと言うと「これまでの対策が無駄だったとでも言うのか!?」と怒られそうだ。

たしかにミクロ視点で考えれば、これまで我々が採ってきた感染対策がウイルス感染に対して効果があるのは理論的には間違いないところだろう。しかし、それがどれだけ効果的だったのかはマクロ的視点で考察されるべきである。

統計は嘘をつかない。厳然とした事実なのである。もちろん事実は動かないが解釈には幅があるわけで、別の解釈は可能だ。むしろそうした解釈をどこに持っていくかという、マクロ的な視点での建設的な議論こそが今後の日本に求められるものだろう。ミクロの理論で組み立てられた仮説が、マクロ視点で否定されるということは医学の世界では往々にしてあるのだから。

2つ目。

RSウイルスがいま大流行している。

しっかりしたデータが公開されている東京都でRSウイルスの感染状況を見てみると、こうなっている。

赤線が今年なのだが、異常な勢いで伸び続けている。過去最大の感染拡大とのことだ。

毎日のようにコロナウイルスに関するニュースが報道される一方で、RSウイルスについては遥かに報道が少ない。小児のRSウイルス患者で小児科病床の半数が埋まっている病院もあるというのに。

RSウイルス感染症流行続く “満床”の病院も 重症化前の受診を | NHKニュース
【NHK】主に子どもが感染し、重症化するおそれもあるRSウイルス感染症の流行が各地で続いています。東京都内では、小児科の病床の半分…

こうした報道のバランスの悪さも目立つが、このことはまた別の重要な仮説を示唆する。

というのも、感染症や疫学の専門家の方々は、昨年RSウイルスやインフルエンザが全く流行しなかったことに対して、

「全国民が手洗い・消毒・マスクなどの感染対策を徹底したこと(逆にそんなに感染対策をしてもコロナは流行るのだからコロナは怖い)」

という論調で説明することが多かった。

しかし、こうした専門家たちの主張は今回のRS大流行でもろくも崩れ去る。なぜなら、国民は手洗い・消毒・マスクなどの徹底した感染対策を今でも変わらず続けているのだから。それにも関わらずRSウイルスは突然過去最高の感染拡大を記録しているのだ。

以前から、昨年のインフルやRS激減の理由はウイルス干渉(簡単に言うとウイルスの種別の縄張り争い。コロナが勢力を増してきたのでインフルなどは追いやられていただけ)ではないか? と言われていたが、こうなるとそちらの説のほうが説得力を増してくる。

とにもかくにも、上記2つの統計から推察できるのは、

「ウイルスの動向やその拡大の機序を解明したり、いやしくも制御しようという試みは、進歩した現代の医学・科学をもってしても相当に困難だ」

ということだろう。

医学は「分からない」ことをはっきりと「分からない」と国民に提示すべきなのだ。

そういう意味では、人間ができる最大の対抗手段は「感染の波に耐えられるだけの“柔軟”な医療体制」といえるだろう。日本はここに殆ど手をつけず、人為的に感染を抑えることだけに終止し、国民を疲弊させてきた。その効果がどれほどあったのか…そうした俯瞰的なマクロの検証が、今の日本に最も求められているものではないだろうか。