ふた月程前、私は落合陽一さんの次の言葉をリツイートしておきました--理解されるのを待っていたら薄まってしまう,成功するまでやっていたら動けなくなってしまう.誰かに理解されるより先に次の行動に移すこと.
何らかの言動を取るとかアクションに移すというのは、周りの人や社会に対し何らかの影響力を行使しようとする意図があります。但し、何らかの影響力を行使することと人に理解されることは別問題です。
拙著『逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言』の中で取り上げた創業経営者の一人、阪急グループ創始者の小林一三さんは「百歩先を見たら狂人と言われる。しかし足元だけ見ていたら、置いてきぼりを食らってしまう。したがって、十歩先ぐらいを見るのが一番いい」という言葉を残されています。
何らかの言動やアクションが時代の先を行き過ぎたらば世に狂人扱いされないまでも、誰も相手にしてくれない・誰も分かってくれないといった状況になりがちでしょう。そして何時の間にやら、その人の支援者が誰もいなくなるといったことにもなり得ます。他方で人に分かって貰える場合もあります。
私は、世の毀誉褒貶など一々気にせずに自分が自分の良心に従って正しいと思う事柄・世のため人のためになると確信する事柄を全身全霊で徹底的に遣り上げることが大事だと思っています。その結果として、一般に理解されることもあるでしょうし、間違っていて失敗することになるかもしれませんが、少なくとも自分自身の良心に問うてどんどんと挑戦し続けて行けば良いのです。
勿論、時として誤解されたり誹謗中傷を受けたりもするでしょう。例えば前々回のブログで御紹介した出光興産株式会社の創業者、出光佐三さんも長年に亘って大変な闘争を続けてこられたが故、毀誉褒貶の多々あった人物で「国賊」とまで言われ色々な形で大変な苦労もされた方です。
しかし出光さんは、「いじめられるということがわれわれにとっては鍛錬であり、わたしは非常に感謝をしておる。日本の政府までが外国の石油カルテルといっしょになって、出光を鍛錬してくれる。このようにいじめられて、鍛錬されたところに、今日の出光の強さができ」たと述べておられるように、「艱難(かんなん)汝を玉にす」と言い聞かせ非常に良い会社を創って行かれたのです。
「Heaven helps those who help themselves…天は自ら助くる者を助く」という諺があります。何かを少しやってみて、誰一人理解してくれないとして、直ぐに止めて仕舞うのでは仕方がありません。「俯仰(ふぎょう)天地に愧(は)じず」(『孟子』)自らの心に一点の曇りなきことを、世のため人のためと思い自分の使命として次々に堂々と為して行くならば、人の助けのみならず天もまた助けてくれることでしょう。
編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年7月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。