住宅ローンを組んでようやく買ったマイホームを家庭の事情や転居で数年しかたたない住宅を売却したら赤字だった、という記事がありました。そんなものでしょう。日本で不動産で儲けるのは至難の業。儲けなくても小銭が残ればラッキーですが、そもそも不動産売買には様々なコストが付きまとい、ちょっとぐらい市況が上がってもそんな計算通りにはならないのが普通です。
住宅を所有していて本当によかったと思うのはローン返済が完了したあとかもしれません。但し、その意味はこれから先は家計のキャッシュフローが楽になるであって、不動産が購入時の金額になっていることは100%ないのです。言い換えば住宅はそれぐらい長期所有をすることを前提にしないと所有することのメリットが見えてこないのです。
しかし、その家が自分にとって本当に住みたかった家なのか、近隣に問題はないのか、子供たちが成長して自分のライフスタイルに合っているか、などを考えると案外、微妙な気持ちになる方も多いのではないでしょうか?「いやいや、住めば都」とネガティブなことは考えない様にしようと思っているのでしょうか?
バンクーバーで20年ぐらい前に流行った居酒屋ブームの際には多くの方が居酒屋進出を図りました。当地ではコンセプトとして新しく、確かに流行ったのですが、今では当時の勢いはほとんどありません。数多くの理由がありますが、私が見る限り若者が酒を飲まなくなったこと、日本で居酒屋を訪れ良い思いをした人たちがそのクールさを喜んだのですが、世代ずれが生じてそのような方々が流行のリーダーシップを取らなくなったことがあります。
当然ながら多くの居酒屋が潰れたし、閑古鳥が鳴く店も多くなりました。ラーメン店も同じで、明らかに飽きが来ていて生き残れる店がどれぐらいあるのか、という気がします。更に追い打ちをかけたのがコロナです。ここバンクーバーは経済が平常化していますが、店に客が戻ってきているとは思えないのです。どうやら食生活の習慣が変わった可能性を考えなくてはいけない気がします。
ビジネスは長くやってそのうま味が出てくるものです。一時的に驚異的な売り上げとなり「破竹の勢い」というところほど「えー、あの店が」ということが突然起きます。何故か、といえば流行とトレンドには勝てないからです。これは飲食店の参入障壁が低いことで必要以上の競争が起きているとも言えます。
以前、ある上場企業のCEOの方と話をしていた際、「人がまねできない水準まで引き上げることが成功の秘訣」とおっしゃっていました。誰でも参入できるものはレッドオーシャンになりやすいということです。これでは思い描いた形を維持するのが難しいのです。
寿司は職人として長く修行を積むことで「本当の寿司」が握れるとされました。当地では中国人、韓国人が握る寿司屋が流行っています。それは客が求めるのが究極感よりもお得感だったりボリュームだったりサービスだったりするからでしょう。「究極」は時として自己満足になりやすく、必ずしもビジネスにはつながらないのです。とすれば誰を向いて仕事をするのか、に落ち着くはずです。「あなたは顧客を放置して自分だけの浮世離れした世界を目指していないか」と。
私の成功観とは奇をてらうことなく、顧客が求めるものを忠実に提供し、時代と変化と共に客とどう対応するか共生することだと考えています。そしてその時間軸の中で階段を登れば確実に成功はついてきます。しかし、時間がかかるのです。10年では無理。20年以上かかるかもしれません。それは冒頭の例の住宅ローンの話と同じなのです。そこに住み続ける覚悟と愛着を維持することができるのか、です。
最近テレビなどを見ているとユーチューバーという職業が当たり前になってきています。またユーチューブに数多くの投稿をしている方々をみると「あぁ、この人たちはこんなに時間とコストをかけ、エネルギーを使って頑張っている」と思います。この時点で90%のライバルは振るい落とされるでしょう。なるほど人気のある番組はすさまじいエネルギーを投じているのです。しかし、私は仮に一定の収入があったとしても5年もすれば99%の人は離脱すると考えています。理由はそんなに人は継続できるものではない、ということです。
私がこのブログを14年ほど毎日書き続けているのは一日に30分とか1時間だけでしか使わないからです。これが半日作業なら3日で止めているでしょう。負担がかかるものはくじけやすいのです。山登りをしていてずっと登りなら誰も行きません。「苦あれば楽あり」です。私は自転車に乗りますが、坂道を登れば必ず下ることが分かっているから頑張れるのです。
住宅ローンの負担額が大きすぎる、だけど嫁さんにも働いてもらって返済する、なんていうのは必ず何かを犠牲にしています。仮にローンを払いきったとしてもその間にできた他の可能性を失ったことを考えると微妙でしょう。
ビジネスでも個人生活でも長期に継続することが何より大事だと思います。もちろん、経験値という意味でいろいろやるのは結構、だけど「俺の人生、これに賭ける」というのは無謀です。今は世の中そのものが2-30年前に比べ格段に複雑になっています。今日の常識と計画は明日には見直さねばならない戦国時代であるがゆえに続けることによりこだわりたいのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年7月25日の記事より転載させていただきました。